ライバル!




「タケシ、審判をお願いできるかな」
「それは構わないが…シゲル、出来るのか?シンジは強いぞ」
「どうだろうね。正直、分からない。…けど、あいつはサトシのライバルなんだろう?」


そこでにこり、と笑って会話を終わらせたシゲルは、ズボンの端を握り締めシゲルを見つめるサトシに、そして俯いて図鑑をチェックするシンジに目を向け、口角を上げる。
負ける気なんてまったく無いくせに、とタケシは内心で微笑むと、ポケモンの調子を確認していたシンジを呼び寄せた。


「3対3のシングルバトルだ。入れ替えは禁止。3匹とも戦闘不能になった時点でバトル終了だ。いいな?」


無言のまま頷く、相対する二人。


「3匹?」


思わず、といった様子でサトシがぽつり、と呟いた。
サトシの隣に立って二人を眺めていたヒカリも、また首を傾げる。


「だって、今シゲルって研究者なんでしょ?それなのにポケモン3匹も持ってるの?」
「持ってるよ。研究者っていっても、いつも研究所にいるわけじゃないからね。特に僕はフィールドワークが専門だから。…大抵のポケモンはオーキド博士に預けたけれど、何匹かは手元に置いてるさ」


腰に手を伸ばしたまま、シゲルは言った。
答える口調は柔らかいが、目線はシンジから片時も外されない。痛いほどだ。

そして、この空気は、


「もちろん、これが僕のベストメンバーだよ。シンジ、キミに勝つためのね」


トレーナーのそれだった。







「では…シンジ対シゲル、バトル開始!!」


「エレブー!バトルスタンバイ!」
「ブラッキー!」


じり、と二匹のポケモンが対峙する。
先に動いたのは、ブラッキー。


「ブラッキー、『でんこうせっか』!」
「『ほうでん』!!」


辺り一面に放たれる電撃。

エレブーに届く前にブラッキーは電撃を食らった。
がく、っと落ちたスピードに、ブラッキーの攻撃は僅かに掠るにとどまった。


「あーっ、おっしい!!」
「今の…ブラッキーが『でんこうせっか』をしてくるのを見越して、シンジは『ほうでん』を指示してたのか?」


我が事のように悔しがるヒカリの隣で、サトシは目を見開いていた。

スピードの高いシゲルのブラッキーの『でんこうせっか』は、間違い無く当たる筈だった。
そもそも『でんこうせっか』は必ず先制を取れる技。
それが、掠るだけなんて。

しかも、


「あ…ねぇサトシ!!」
「ああ、あのブラッキー、麻痺してるぜ」


見下ろすエレブーから瞬時に離れ、臨戦態勢を取りながらも震えているブラッキー。
立っているのがやっと、という様子。


「ハッ!これまでか?」


嘲笑うシンジ。
対するシゲルは、無表情のまま、ただ二匹を見つめている。


「どうかな。ブラッキー、森の中へ走れ!!」


シゲルの指示に、ぐ、と四肢に力を入れ、ブラッキーは森の中へと駆ける。


「エレブー、『でんげきは』…何ッ!?」


指示に従わないのをいぶかしんで目を向けると、エレブーがのた打ち回っていた。
そして、何度も自分の頭を地面にぶつけている。


「混乱してる!」
「チッ!『あやしいひかり』か!だがいつの間に……、っ!あの時か!!」


『でんこうせっか』でエレブーに迫ったとき、すでにブラッキーは『あやしいひかり』を発していた。
それは正面にいたエレブーにしか分からないもの。
まして自分のポケモンに注視しないシンジでは、気づくのが遅くなる。


「それだけじゃない。ブラッキー!」


がさ、と音を立てて茂みから飛び出すブラッキー。
その頭上には、渦を巻く黒影の塊。


「『シャドーボール』!!」
「エレブー、交わせ!」


シンジの声で正気に戻ったエレブーは、迫り来る塊を避けようと体を翻す。


「…無駄だよ」


しかし思い通りに動けず、正面からシャドーボールを受けた。


「ブラッキー、『サイコキネシス』!!」


崩れ落ちそうになりながら、最後の力で放電を試みたエレブーの体をサイコキネシスが持ち上げる。
そのまま、

ガッ!!

鈍い音を立てて、大木にぶつかる。


「「あ!!」」


息を詰めて試合を見ていたヒカリとサトシの声がハモった。


皆が見つめる中、衝撃で落ちた葉っぱに埋まるエレブー。


力なく投げ出された四肢。
もはや動く力は残されていない。


「…エレブー、戦闘不能!」


タケシの声が響き渡った。

 

2009.12.13. up.
ブラッキーの特性:『シンクロ』

NEXT TOP

Image by web*citron  Designed by 天奇屋