二日目 午後




「…ッ!」

「……ここは?」
「うッ……オレの心配はいいから。続けてくれ、グリーン」
「レッド、こんな足じゃ無理よ!今すぐ辞退届を書きなさい。このまま続けたらアンタのトレーナー生命に関わるわよ!?」
「…ッ!……ブルー、いいんだ。だってオレは、」







「これより『ポケモンコロシアムinカントー』の開催宣言および記念式典を行います!!」
「我がカントー学園体育祭の二日目、午後の部では初等部、中等部、そして高等部の垣根を越えた一大イベント『ポケモンコロシアムinカントー学園』を開催いたします」
「遡ること一週間前!レンタルポケモンを使用してのバトルで競う予選トーナメントが開催されました!!」
「予選トーナメントではトレーナー自身の能力、そして『運も実力の内』、強力なポケモンを引き寄せる運の強さが試されました。運営委員の予想を遥かに上回る1000通を越える応募者から、本戦通過者100名が選ばれました」
「また抽選により出場を決めた、幸運な一般参加者さん達も!!一般参加者さんは本戦からの出場となります!!」
「加えて、今年度は学園がお招きしたゲストの方も参加します」
「まずは…――」



体育祭を行ったグラウンドから徒歩15分。各校舎の真ん中に位置するバトルフィールド。
ドームのような形をしている巨大な建物で、普段は実習やとある部活の活動場所として使用されるが、今日は観客が入り超満員である。

その中でスポットライトを受ける2人。
特設ステージの真ん中で、着飾った少女2人がマイクを片手に交互に口を開く。
一人は動、一人は静をイメージした風格をしているが、この大会のために選ばれたキャンペーンガールのようなものであり、大会前にコンテストで選出された人物たちである。
それだけこの大会が大きなものであることを暗に意味し、その分大会を大いに盛り上げる存在である。
が、やはり大会を最大限に盛り上げるのは選ばれし出場者たちが魅せるバトルであろう。


「――それでは…一回戦の準備が整うまでしばらく時間がありますので、控え室で待機している選手たちにインタビューを行いたいと思います」
「まずは前回…つまり去年ですね!で、二位になりましたグリーン選手の控え室に繋がってるのですが…あれれ?いないですねぇ」
「規則上、時間までに会場入りしていればいいため控え室にいなくても構わないのですが…それではインタビューを続けます」
「次のお部屋は……ブルーお姉さま!…じゃなかった、去年入賞したブルー選手の控え室です!!インタビュアーさん、ずずいっと入っちゃってください!!」
「あら…ブルー選手もいませんね。では、次の控え室に行ってください」





「先輩っ、レッド先…」


テレビ放送される会場の様子は、どの控え室からも見ることが出来る。
今も白熱する一回戦の様子が映し出されているが、その中に彼の姿が一瞬でも映らないことに不安を感じたゴールドは、彼の控え室に訪れていた。

昨年の入賞者、それも準優勝者ならば、特集まで組まれて放送されるのに。
目立つことが自分ほど好きでないにしても、インタビューにさえ答えないなんて彼らしくない。それに、二日目…今日、午前の最終種目。彼はどこか変だった。傍目にはいつもと変わらないように見える、微妙な差異。
全てを確かめようと、彼の控え室のドアをノックしたはいいけれど。


「あら、ゴールドじゃない。レッドに用事かしら?それともグリーン?」
「ブルー先輩!?どうしてレッド先輩の控え室から……グリーン先輩も中にいるッスか?」


扉の向こうから現れたのは、彼ではなく。

思わず不健全なことを考えてしまったのは御愛嬌だ。
けれど、あの人に限ってそれは。ブルー先輩に限って、それは。グリーン先輩もいるなら、なおさらだ。


「いるわよ。オホホ、中継にレッドが映らないから心配して来た、ってところかしらね」
「オレ、レッド先輩に確かめたいことがあって」
「確かめてどうするの。バトルしないでください!なんて言うつもり?」
「そんなつもりは……!」
「どっちにしろ諦めなさい。今のレッドは誰とも会おうとしないわ。ゴールド、たとえアンタであってもね。ああなったレッドの傍にいられるのはアイツだけよ」
「でも、オレ心配なんスよ!選手リレーが終わった時、先輩なんかおかしかったッス……もしかして、どっか怪我でもしてるんじゃ無いんスか!?」

「アンタが何を言ったって、アイツは戦うわよ。『戦う者』だもの」


歓声が遠くに聞こえる。
一回戦が始まって30分以上。会場は大いに盛り上がっていることだろう。
けれど、二人の間を流れるのは寒々しい空気。


「そ、れはそうッスけど…今日を逃したって、レッド先輩ならいつでもバトル出来るじゃないッスか。それに先輩の強さを知らないトレーナーはいないッスよ、別に今日戦わなくても…」
「ゴールド、今日のレッドは『違う』わ。それでもアイツに勝ちたいなら、自分と自分のポケモンのことだけを考えなさい。……どれだけ経験があろうが名前をもらおうが、アンタもアイツもただのトレーナーには違いないわ。それがアイツは分かってないみたいだけど。ま、多分永遠に分からないでしょうね。レッドのことだもの」







「――…レッド。時間だ」
「オレは戦い続ける。それがバトルの中でしか何も残せないオレの、『戦う者』としての使命だ。誰が相手でも全力で戦う。本気で挑む。『戦う者』の称号に恥じないように、誰にも負けない。それがオレだ。そうだよな?」
「お前が思う通りにやればいい。オレは止めない。……止めたってお前は聞かないだろうしな」
「グリーン、オレのライバルはお前だけだぜ。これまでも、これからもだ。だから約束して欲しい。オレがどんなになっても、本気で向かってきてくれよ」








「さあ!第一シード、レッド選手の入場です!!第一回戦から準決勝までは、3on3バトルとなります。果たして、どのポケモンを選ぶのでしょうか……両者、モンスターボールを手にしました!――…では、バトル・スタート!!」

 

2009.12.13. up.

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