今なら入場門にいるはずだ。
グラウンドはまだ開会式の後片付けを始めたばかりだから、ちょっとくらいなら話せるだろう。
そう思って足を進めると、数人ごとに集まった女子グループの中に、赤色のハチマキを手にした彼女と、その隣に同色のハチマキを頭に巻いた見知った後輩がいた。
「ブルーに…クリス?」
「あ、レッド先輩!おはようございます」
頭を下げて挨拶する律儀な姿に、ちょっと感動する。
「せんぱーい!おはよーございます!!」といきなり背後から飛び込んでくるどっかの誰かと同じ年齢だとは、とてもじゃないけれど思えない。
「おはよう。二人ともここにいるってことは、一緒の種目に出るのか?」
「組まで同じよ。こんなに早く当たるとは思ってなかったけれど…ホホ。クリス、アタシは負けないわよ?」
「私も全力で走ります。負けませんよ、ブルー先輩」
真面目で冷静(で委員長)と名高いクリスタルがここまで好戦的なのは、初めて見た。
けれど、足に絶対の自信を持っている彼女だ、足に関わることならたとえそれが陸上競技であっても負けたくないのかもしれない。
『女子100メートル走の出場者は、入場門前に整列してください』
「それじゃ、レッド先輩、また後で」
「ブルーもクリスも頑張れよ。オレはこっちで応援してるぜ」
「あら、ア・タ・シを応援してくれないのかしら?」
「……ぅ」
いくら上目使いしても、お前にはもう二度と騙されないからな!
……けれど。
計算づくだと分かっていても、反応してしまうのが男子学生の悲しいサガってやつだ。
「クリスも大切な後輩だからな。…ほら、早く並ばないと係りの人が迷惑するだろ!!」
クスクス笑うブルーに背を向けて、自分のクラスのテントに向かう。
小さく聞こえた『ちょろいわね』は、絶対に空耳だ!!
……レース結果?グリーン、お前見てなかったのか?
……あぁそっか、それじゃしょうがないよな。どっちだと思う?
……正解。けど、次はどうだろうな。
……うん、二人とも最後のゴール地点まで競り合ってて、どっちが勝ってもおかしくなかった。次もきっといい試合だと思うぜ。
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さて、次は何だっけ……
あ、次は男子の100メートル走か。早く並ばないと……
「レッド先輩!」