青春と砂糖漬けレモンの関係




クラス用のテントを出て、とりあえず左へ足を進める。

あてもなく彷徨っていると、前方にゆらゆら揺れる馬のシッポを見つけた。珍しい、黄色のシッポだ。
思わず近づいてみると、シッポの主が振りかえった。


「あれ…レッドさん!おはようございます」


頭には白色のハチマキ。
白は総合科のシンボルカラーである。

ついでにトレーナー科(と研究科の一部の生徒)は赤色、研究科は青色である。
今は自分のテントに置きざりにしてあるが、自分の種目が近付いたらレッドも赤色のハチマキを頭に巻かなければならない。


「イエロー、おはよう。…そっか、こっちは総合科のテントエリアだったな」
「はい。レッドさんはどうしてここに?」


トレーナー科のテントはあっちでしたよね?と首を傾けるイエローに、ちょっと時間が空いてるんだ、と返す。
出場する1つ目の種目、男子100メートル走までは30分ほどある。入場門に向かうには早い。


「あ、それならちょうど良かったです!ここでちょっと待っていてください、渡したいものがあるんです」


テントの群れの一つへ走っていったイエローから目を離して、きょろきょろと周囲を窺った。
総合科に立ち入ることは初めてだが、トレーナー科に比べると、どこか穏やかな空気が流れているような気がする。

トレーナーではなくブリーダーを目指す生徒が多いんですよ、と以前イエローが言っていたが、椅子に座ったり歩きながら談笑する生徒たちを見ていると少し分かる気がした。


「おまたせしました。あの…これ、昨日作ったんです。食べてくださると…その……嬉しいんですけど……」


渡されたタッパーを開けてみると、見慣れた果物の輪切りが綺麗に並んでいる。


「……これ、レモンの砂糖漬け?美味しそうだな、一枚食べていいか?」
「はいっ、好きなだけ食べてください!……レッドさん、今年もたくさん出場するって聞いたんで、その…」


顔を真っ赤にさせて俯くイエローに気づかず、言葉に甘えてレッドは再びタッパーに手を伸ばした。
甘くて酸っぱくて、すごく美味しい。正直タッパーごと貰いたいくらいだ。


「後でレッドさんのテントに持っていこうと思ってたんです。ええと…トレーナー科にはグリーンさんやブルーさん達もいますし……」


ピンときた。
いくら鈍いやら鈍感やら言われるオレでも、さすがにこれは分かるぜ。


「イエロー、これ貰っていいか?今度部活の時にタッパーは返すから」
「え?あ、はい、持っていってください。タッパーはいつでもいいです、気にしないでください」
「じゃあ、ちゃんとグリーンに食べさせるからな!それとイエローが作ったってちゃんと言っておくから。イエロー、美味かったぜ。ありがとな!!」

男子100メートル走まであと20分。
一度テントに戻って、それから入場門に向かえばちょうど良い頃だろう。

砂糖漬けレモン入りのタッパーを持って、イエローに背を向ける。


イエローは学校に来る前、短い時間だったがトレーナーだったそうだ。
その時トレーナーとしての在り方、ポケモンについて教えたのがなんとグリーンだというから、なんという偶然だろうと驚いたものだが、それならイエローがグリーンを慕うのも分かる。


「レッドさーん!なんか誤解してませんかー!?」


とりあえず、このタッパーをグリーンに渡すのが目下のオレの使命だ。
待ってろよイエロー、オレがそれとなくお前の気持ちを伝えてやるからな!!







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次は男子の100メートル走か。早く並ばないと……

 

2009.12.13. up.

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