[注]
レッドくんとグリーンくんは幼馴染です。
レッドくんは毎年冬の間引きこもってます。
レッドくんのおかあさんはログアウトしました。
グリーンくんは、大急ぎで走って、レッドくんの家を訪ねました。
玄関のドアをコツコツ。でも、返事がありません。
「レッド、レッド!!」グリーンくんが大きな声で呼びました。
「起きろよ、春が来たんだ!おれたちの旅立ちの日が来たんだ!!」
返事はありません。
「レッド、おいレッドったら!!」
グリーンくんは叫びました。
「太陽が輝いてるんだ!雪だって全部溶けてる。起きなって!」
「……中に誰もいないよ」
家の中から小さな声がしました。
グリーンくんは鍵を差し、家の中に入りました。
自家発電が一般的になった時代だってのに、家の中は真っ暗です。
どこもかしこも、カーテンはみんな閉じられています。
「レッド。おまえはどこにいるんだ?」
カーテンを開けながら、グリーンくんが呼びました。
勝手知ったる他人の家です。
「……あっちいって」
階段を昇ると、部屋の隅から声がしました。
レッドくんはベッドに寝ていました。
布団をすっかり頭からかぶっていました。
カーテンを開いてから、グリーンくんはレッドくんをベッドから押し出しました。
階段を押して、嫌がるレッドくんを家から押し出して、玄関の前につれていきました。
レッドくんはぎらぎらする日向で目をぱちくりさせました。
「……助けて」
レッドくんが言いました。
「なんも見えない」
「馬鹿なこと言うなって。おまえが見ているのは、4月の透き通った暖かい光なんだ。つまりおれたちの旅立ちの日が来たってことなんだぜ。レッド、おじいちゃんとの約束を思い出せよ」
グリーンくんが言いました。
その言葉に、レッドくんは、グリーンくんのおじいさんからあるお願いをされていたことを思い出しました。でも、それは秋のことです。
「オレたち、これからはマサラを出て、草原を掻き分けながらポケモンを集めるんだ。森をパートナーと駆け抜けることも出来るし、川で一緒に泳ぐことだって出来るんだぜ。晩には夜にだけ現れるポケモンを探しに行って、図鑑を埋めていくんだ。旅の最後にはおれたちのどっちかがチャンピオンになるんだ」
「グリーン、きみの勝ちでいいよ」
レッドくんが言いました。
「ぼくはすっかり疲れてるだろうから。ぼく、もっと寝るよ」
レッドくんは家に戻りました。
ベッドに入ると、また、頭から布団をかぶりました。
「待てよ、レッド」
後を追いながら、グリーンくんが叫びました。
「これ以上マサラにいて、何があるんだよ。おまえは、面白いことをみんな逃しちまうぜ」
「ねえ、グリーン」レッドくんが言いました。
「ぼく、どのくらい眠っていた?」
「11月からだ」
グリーンくんが言いました。
「それじゃあ、」
レッドくんが言いました。
「もう少し眠ったって悪くないでしょ。5月の半ばごろになったら、もう一回来て起こして。おやすみ、グリーン」
「でもさ、レッド」
グリーンくんが言いました。
「それじゃそれまで、オレは誰とライバルになればいいんだよ」
レッドくんは返事をしませんでした。
もう眠っていたのです。
グリーンくんはレッドくんの部屋のカレンダーを見つめました。
一番上はまだ11月になっていました。グリーンくんは11月を破きました。
12月も破きました。
1月も。
2月も。
そして3月も。
4月が出てきました。
4月も破いてしまいました。
それからレッドくんのベッドへ走って戻りました。
「レッド、レッド。起きろよ。もう5月だ」
「……なんだって?」レッドくんが言いました。
「……、5月ってそんなに早く来るのかな…」
「そうだって。カレンダーを見てみろよ」
レッドくんはカレンダーを見ました。
一番上は5月でした。
「…5月だ」
レッドくんは、グリーンくんに手を引かれながら、ベッドから這い降りつつ言いました。
それから二人は、一緒に、オーキド博士の研究所に向かいました。
一番最初のポケモンは、何にするか、お話ししながら。