探検隊 2




が眠気を訴えだしたのは、思えばそんなに前のことじゃなかった。
はじめは疲れが溜まってるのかな、なんて軽い気持ちで、たまの休暇に温泉に誘ってみたりした。
それでもは眠いの、と繰り返した。
最初は何日かに一回、まだ太陽が高いうちに。次第にその頻度は増えて、探検の途中で寝こけている、ということまであった。
もしかしたらまたダークライが何か企んでいるのだろうか、と思ったけれど、彼は記憶を無くしてどこかにいるはずだ。ダークライのせいじゃないということはすぐに分かった。

嫌がるを無理やりお医者さんに見せたけれど(だってそうでもしなきゃ自分で解決しようとする。それがの長所で、短所だ)、原因は分からないと言われた。
そして『今は様子を見なさい』とも。





「…おはよう、
「おはよう、。…眠いの?」

うん、と小さく呟くと、は眼を擦った。
今にも瞼が落ちそうで、あっちへふらふら、こっちへふらふら。
顔を洗おうと歩く姿さえ危なっかしい。

もともと、の寝起きは悪くなかった。
太陽が昇れば起きるし、よっぽど疲れてなかったらぼくがごそごそ動くだけで目を開けちゃう。
目が覚めれば、すぐにおはよう、って笑って、欠伸を漏らすぼくの隣でテキパキと朝ごはんの用意をするくらいだった。
だけど、最近のの寝起きは良くない。良くないどころか、酷くなる一方だ。

「ほら、こっちだって」
「…ん、ありがと……」

壁にぶつかりそうになったところで見ていられなくって、手を貸す。
いつもより体温が高いみたいだ。まだ半分寝てるからかな。



いつもの倍以上の時間をかけて、は朝食を平らげた。
まだ時々ぼんやりしているけれど、だいぶ目が覚めてきたみたいだ。

「――、今日はどうするの?」
「……頑張る」
「駄目だって。まだ眠いんでしょ?そうじゃなくって、今日はガルーラおばさんのところへ行くか、それとも…」
と探検か救助に行きたい」
「気持ちは嬉しいけど、朝から眠い日は危険だってが一番分かってるじゃないか」
「でも…」
「ほら、前モンスターハウスの真ん中で寝そうになったこと覚えてる?ぼくはもうあんな思いしたくないんだからね!」
「…ごめん。じゃあ、ここで待ってる」

目に見えてしゅん、となったに、ちょっと罪悪感が湧いた。
けれどここでちゃんと言っておかないとこっそりついてくるから(実証済みだ)、心を鬼にすることにしている。

「じゃあ、行ってくるね。ちゃんと大人しく寝てること。お昼すぎくらいになったら誰かに様子を見に来てもらうから、何かあったら素直に言うんだよ?」
「うん、分かった。――…いってらっしゃい。気をつけてね」

本当は、こんな日くらいはずっと隣で見ていてあげたいのだけれど、どうしても外せない依頼が重なってしまって救助に行かなければならないのだ。
それもこれも、ぼくとで築いた探検隊が有名になって、ひっきりなしに依頼がくるようになってしまったのが原因だ。
頼りにされるのは嬉しいけれど、こんな時は煩わしく思うこともある。
勿論断ることもできるけど、その分困っているポケモンが増えるのだから断ることなんて出来ない。ギルトのみんなも手伝ってくれるし、何よりが悲しい顔をするから。

(いってらっしゃい、って送られるのも、結構嬉しいんだけどね)

いつもは一緒に家を出ていたから、いってらっしゃい、という言葉の暖かさに気づいたのはごく最近のことだった。
初めこそくすぐったかったけれど、今は自然に行ってきます、なんて言える。
慣れる分、ぼくとの離れる時間が増えていくことには気づいていたけれど、仕方ないと諦めた。




ぼくたちがこなす依頼は、危険が伴うものばかり。
そんな所に体調の思わしくないを連れていくなんて出来ないし、それならぼくたちの家で過ごしていてくれた方が、ずっと安心だ。――…そう思っていた。

 

2010.08.16. up.

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