ホームルームの終わりに、先生は爆弾を落としていった。
「今週中に提出するように」
は配られたプリントへ目を向ける。
『進路希望 調査表』
しんろきぼう、とは心の中で呟いた。卒業まで一年、もうそろそろ将来を見据えなさいということだろう。
優柔不断な子どもに配慮したのか、第二希望まで書けるよう枠がある。半年後には一つになるだろう。
この世界では10歳になると大人とみなされ、勤労の義務がある。
けれど職業が学生であるうちはまだ保護の対象となっていて、大人の特権が無い代わりに様々な面で免除がある。それも、あと一年で終わり。
筆箱からシャーペンを取り出して、ノックする。紙に芯をのせて…は手を止めた。
みんなは、と顔を上げて教室を窺うが、のように手を止めている子は一人もいない。
いつもはホームルームが終われば真っ先にグラウンドに行く男子も、グループで固まっておしゃべりする女子も、皆一様に真剣な顔で枠を埋めている。
隣席の男子のプリントを盗み見ると、第二希望では足りなかったのか枠外にまで希望を書いている。
第一希望:ポケモントレーナー
第二希望:ポケモンブリーダー
第三……
気づかれないうちに視線を外した。
机の上には三十秒前と変わらず、真っ白いプリントが置かれている。
は自分が何になりたいのか分からなかった。書くのを諦めて、芯を戻す。
あいつだったら、迷うことなく書いただろうな…。
教室の後ろを横目で見る。そこには誰も座っていない机が二つ置いてあった。
半年前からずっと空席で、けれどいつでも帰ってこれるよう片付けられずにそのまま置いてある、の幼馴染たちの机だった。
………。やめよう、これ以上考えるとまたいつもの悪循環に陥ってしまう。
これ以上ここに座っていれば、吐いてしまいそうだった。
はプリントをファイルに入れ、机の中のものを鞄につっこんで立ち上がった。
あいつの机を見ないですむよう、前の方の出入り口から出ることにする。
去り際にいつも一緒に帰っている友人が帰るの、と顔を上げたが、ごめんと手を合わせて、足早に教室を出た。
これは逃げだって分かっている。けれど、他に方法が思いつかなかった。
私は、ずっと…――