こんにちはです。
突然ですが、サファリゾーンで絶賛迷子してます。


10歳以下には入園制限があるだかなんだかで、希望の川下りコースは選べなかった。
そのため係の人が進めるままにコースを選んだのだけれど、どうやら、…いや、どう考えても、『わくわくおさんぽコース』から外れている。

「……まいったな」

右を向いても左を向いても、前も後ろも森。こんなことなら一つでいいからモンスターボール隠し持ってこればよかった、と後悔するけれど、今更だ。

迷子の鉄則その一、迷ったら動かない。
迷子にならないための鉄則その一、「あれ?ちょっとおかしいぞ?」と思った時点で即安全なポイントまで戻る。

だって知識としては知っている。 が、珍しいポケモンに出会えたら儲けモン精神でそのまま進んでしまったのであった。結果は言わずもがな。

…けれど、このままじっとしているわけにもいかない。
本物の山や森ならともかく、ここは人工の施設だ。 広さは規格外だが、歩いていれば休憩所の一つや二つ、入園者のひとりやふたり、きっと見つかる。だから、まずは道を探そう。それも、人が通っていそうな道。獣道は不可。

そうと決めれば、行動は早かった。
は大きな木の幹に背中を預けながら、受付で渡されたナップサックをひっくり返す。 図鑑、キーボード、方位磁針、財布、空のサファリボールが28個、えさ、白目を向いたメカポッポ。以上。その他の物は全て預けてある。
まさか迷子になるなんて思わなかったから、ゲート口の方角は曖昧。方位磁針は使えそうにない。
一人旅であればそんな油断をすることもないのだが、今回は(自称)優秀なナビゲーターがいたために、自分では確認しなかったのだ。

持ち歩き型ナビゲーターのメカポッポ。 ただし充電切れかうんとも寸とも言わなくなってナップサックに突っ込んだ、という但し書きつき。
充電中や待機中は目を閉じるのだろうが、電池の切れるタイミングが悪かったのか白目を向いたその姿は、純朴な子どもでなくても感じるものがある。

「けどまぁ…どうにかなる」

運がいいことに、レベルは低いがとりあえず1匹は捕まえられている。
ここの捕まえ方はえさを投げるとか石を投げるとか、なかなか難しい。 けれどルールに煩そうなメカポッポはこの通りだから、ピンチになったら捕獲したばかりのポケモンを使って戦えばいい。
ナップサックに再び道具を詰め込んで、立ち上がる。 といっても、どちらを向いても道なき道……ポジティブに受け止めれば、選び放題といえなくもない。つま先が向いている方角に足を踏み出す。

木々のざわめき。水の流れる音。何かの鳴き声が遠く聞こえる。
……あぁ、メカポッポが生きて?いるうちに一匹捕まえておけてよかった。ほんっとーに。





これまでに出会えたのはニドラン♂♀、コンパン、パラス、ドードー、ヤドン、クラブなど比較的小型で性格も穏やかなポケモンばかり。
サファリゾーンの目玉はもっと野生的で活発に活動する大型ポケモンの生態系を間近で見れることにあるが、今だけはこの『不運』に感謝する。

バトルゲットのポケモンは、普通、すぐには懐いてくれないものだ。 しかもはじめに捕まえたニドラン♂はバトル自体知らなかったようで、指示を出してもきょとんとこっちを振りかえる。それでもどうにか無事なのは、ひとえに相手もきょとんとしていたから。

…あぁ、はじめのエリアで飛び出してきたのが、えさを投げれば疑いもせず食いつき、石を投げれば怒って逃げ出すような臆病な子たちばかりでよかった。
もちろんエリアを変えればそんなポケモンだけではなくて、バトルとはなんぞやを一から教えたニドラン♂が進化する程度にはバトルを重ねている。

の前を歩き、四方八方を威嚇しているニドリーノを見ながら思う。
進化すると怒りっぽい性格になると聞いているけれど、育て方を早速誤ったか、なんだか想像していた以上に喧嘩っぱやくなってしまった。尖りたいお年頃なのだろうか。
けれど一匹に絞ったのは正解だった。このレベルなら、このままいけそうだ。

「――それにしても、静かだな」

高台に登ってエリアを見下ろしながら、ポケモン…じゃない、ゲート口を探す。
いけない、まずは出ることが優先だった。ちょっと余裕が出てきたからって、……、あぁでも、あそこの茂みに何かいそうな気がする……。

「このエリアはケンタロスの群れの縄張り。他のポケモンは彼らを恐れ、逃げ出してしまっているのさ」

後ろから掛かった声に振り返れば、風変わりな格好をした男が腕を組んで草むらを見下ろしていた。
その脇には、の二倍は軽くありそうな大蛇…アーボックがシューシューと舌を出し入れしている。

強者と思ったか、飛び掛ろうとしたニドリーノを手で制し、彼の口から出た言葉を繰り返す。

「ケンタロス…ですか?ここに?」
「気性が荒く、戦う相手がいなければ大木にぶち当たってなぎ倒す暴れ牛さ」

そんな珍しいポケモンが、と思わず声を弾ませると、男はそうだ、と頷いて一点を指し示した。
近づいて男の指の先に目をやると、…うわ、木がおもちゃみたいに折れてる。細い木ではない、クチバのジムリーダー・マチスが両手を回しても指と指がくっつかないだろうって位の大木だ。

「それより、君のポケモンはその一匹だけか?ここは40レベル以上のポケモンを三匹連れ歩いていないと入れないコースだろう」
「え…でも、ポケモンはゲートで全て預けるように、って…」
「なん…だと?」

ここに至るまでの事情を説明すると、男は「何度言っても杜撰な管理をしおって…」と青筋を立て、苦々しく呻く。
アーボックも主人に感化されてか牙をむき、尾で地面を叩きつけている。正直、ふたりともすっごく……ってこらニドリーノ、わたしの後ろに隠れるんじゃない。

それでも男はすぐに元の顔に戻ると、アーボックを一撫でして落ち着かせてからいくつか質問をしてきた。
その中で分かったのだが、どうやら、ここは『わくわくおさんぽコース』からもっとも離れたコースらしい。勘が悪いのか、それともハンターとしての勘が勝ったか。

「…事情は分かった。このエリアは一人では危険だ、出口まで同行しよう」
「いえ、そこまでしていただかなくても!出口の方向さえ教えていただければ後はなんとかします。この子よりレベルは劣りますが、今までに何匹か捕まえましたし」
「それは君がこれまでに通ったエリアのポケモンだろう?これから通らなければならないエリアのポケモンには、ひっかき傷一つ与えられやしないさ」

…いやいや。ちょっと待って、私そんなところを一人で進もうとしてたってこと?
だってそんなレベルのポケモンが野生同然に生息してるだなんて……管理者ー!!柵を作るとかなんかして、コースはきっちり分けてー!!間違っても未熟者が入らないように!!あとメカポッポの充電はちゃんとして!!!

「すみません、お世話になります。あの、遅れましたが、私、っていいます」
「拙者はキョウ、今に生きる忍よ」

SHI☆NO☆BI

「へ、へぇー……。キョウさんはどうしてここに?」
「あるポケモンを探す途中でな。痕跡探しというわけよ」




「そうか。君があの、」
「?」

道中彼が何かを呟いたことに、突如始まったケンタロス同士の縄張り争いに気を取られていたは気づかなかった。

 

2011.04.08. up.

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