ポケモンセンターにポケモン達を預け、タマムシデパートを訪れたは、最上階『憩いの広場』に設置されたベンチへと腰をおろした。
カントー一の大型ショップなだけあって、噂に違わない商品の揃いようだ。
階下で購入した道具をリュックに詰めていく。と、歪な形になったリュックに、少し買いすぎただろうかと後悔する。
まぁ、すぐに無くなるんだろう。なんせ一番買ったのはボールだ。
一つ一つは小さいとはいえ、それが束になれば容量の多くを占めることになる。けれどダース単位だとお得に買えてしまうのだ。
店員の口車に乗せられた気もしないではないが、モンスターボールならばいくらあって困るものではない。
新製品だと渡された試供品のアイテムも詰め込む。
けれどバトル中に使う暇なんてあるのだろうか。攻撃力が一段階上がる、なんて、形勢逆転のきっかけになるかもしれないが。
また、それとは別に。
「タマムシのジムリーダー?そりゃあもう凄いひとだぜ。なんたってタマムシシティの名家の一人娘にして、若くしてジムリーダーに選ばれたひとだ」
「バトルだけじゃなく頭の方も凄くてよ。しかもこれまたべっぴんでなぁ。才色兼備ってのはああいうお方のこと言うんだろうな」
少し情報を集めただけでも、この街のジムリーダーの凄さが窺えた。
予定では、次のバトルに出すポケモンは炎・飛行のレンと『れいとうビーム』の使えるハクであった。
相性からいって力押しで有利に進められると思っていたが、作戦を練り直す必要があるかもしれない。
「彼女に挑むんなら、広ーく見ることを忘れるなよ」
垂れかかるシダ植物をかき分けて進むと、その先に背を向けた女性がいた。
が見ている前で、白い手が伸びた。軽い音がして、葉が落ちる。
先ほどから聞こえたパチン、パチンというのは、彼女の持つ鋏が奏でた音だったのか。
植物を育てたことの無い自分には、彼女が何をやっているのかよく分からない。興味はあるが――…
「……あら、こんにちは。見学の方ですか?」
もっと近づいて見ようかと思案している内に、彼女が振り返ってしまった。
綺麗な人だ。それに、どことなく気品がある。まるで、深窓のお嬢様みたい――…
「…あ。っと、すみません。お邪魔しましたか」
「いいえ、ちょうど休憩しようと思っていたところですわ。植物に興味がおありで?」
「綺麗だな、とは思うんですけど、その…難しいことはよく分からないです。ごめんなさい」
「そんなことおっしゃらないで。綺麗だ、の一言だけで十分ですわ。ありがとうございます」
折角ですもの。案内いたしますわ。
そういって鋏を閉まった彼女に、は慌てて近づいた。
「いえ、そこまでしていただかなくても」
「ここには、わたくしの好きな花がございますの。見ていただけませんこと?」
「…じゃあ、お願いします」
「こちらですわ」
どことなく楽しそうな彼女の様子に、断りの言葉は言い出せなかった。
「この温室では熱帯植物を植栽していますわ。こちらがシクンシ、そちらはオオバナアリアケカズラといいましてよ。黄色の大きな花を咲かせますの」
「へぇ、見てみたいです」
「夏にまたいらしてくださいな。とても素敵ですのよ。そして、次に紹介いたしますのが、わたくしの一番好きな花ですわ。花を咲かすまで2年、3日だけ咲きますの。お見せできて嬉しいですわ」
けれど3日の後は枯れてしまう、と彼女は言う。
これほど主張する花なのに、その命はかくも儚いものなのか。そう問うと、だからこそ好きなのです、と返る。そして、「それと、」と彼女は微笑んだ。
「この花は、世界最大の花、『ラフレシア』。わたくしのパートナーと同じ名前でしてよ」
90センチほどの、大きな赤い花弁。
この温室に漂っていた、噎せ返るような強烈な異臭の元。
「カスミから聞いておりますわ、マサラタウンの。――…このエリカがお相手いたしましょう」
2009.06.19. up.
2012.02.23. 改