の朝は基本的に早い。
ポッポが鳴き始める前から起床し、ジョーイが動き出すより先に支度を終える。
街に到着してからも2日は早朝フィールドワークに赴き、2日は夜を待って出る。3日は昼からだ。
というわけで、基本的に一つの街には一週間滞在するのだが、それは運良くデータ収集が出来た時だけ。この所ペースが遅くなってきていることに、は焦りを感じ始めていた。
そんなわけで……
「おぉ、タマムシシティに着いたのか。この時期のタマムシは花が大層美しいんじゃよ。いや、良い季節に着いたものじゃのぉ」
「……そうですね」
「んん?どうしたのじゃ。桜に木蓮、コブシに、桃。日々草なんてのもワシは好きじゃがの」
「私も春は好きですよ。春は」
迎えた二度目の春。
見た目には僅かにだがサイズの合わなくなった服が、少々恨めしい。旅に出るまでは早く大きく、とあんなに願ったものなのに。
靴は合わないと仕事に差し支えるため時々新しいものを購入するが、そうでない服を新調するのは、気持ち的にも安くない。
となると、新たな季節に浮かれるオーキド博士すら若干ウザ…煩わしく思えるから不思議だ。
この街にはカントー一の規模を誇るタマムシデパートがあるから、少し位は散財してもいいか。
……いやいや、博士から頂いているお金だ、自分の服のために使うのはいかがなものである。
「、フィールドワークは焦っても良い結果は出ん。必要なのは、図太さと我慢強さ、それと好奇心じゃよ」
それとトレーナーたるもの、ポケモンを愛するように、自然を愛でる気持ちを忘れてはならぬのじゃよ!
はい、肝に命じておきます!!…やだあっつい。春なのに。
「そうじゃ、レンとは仲直りできたかの?シオンでちょろっと言っとったじゃろう」
「はい、ちゃんと私の気持ちは伝えましたから。レンの気持ちも、前よりずっと分かるようになりました。今度はメンバー同士の仲がちょっと心配ですけど…」
「なーに、心配はいらんよ。が分け隔てなく愛情を注いでやれば、いずれ仲良くなるじゃろう」
ワシのポケモン達ものぉ、と語り始めたオーキド博士の言葉を右から左に聞き流して、は地図を平げる。
シオンタウンから8番道路、地下通路を通って、7番道路。
とりあえず薬と道具を、と思ってタマムシを先に訪れたが、次はどこへ行こう。
ヤマブキか、それとも先にセキチクか。
「――…その時はさすがにワシも匙を投げようかと思ったがの、じゃがポケモンを信じて…――」
古今東西おじいちゃんの話は総じて長い。旅をして学んだことだが、たぶん『真理』だろう。
「――…というわけでの、最後には捨てられたポケモンを一緒に育てるまでに……、ちゃんと聞いとるのか?」
「はい、ちゃんと聞いてますよ。それで、これからなんですが、調査とジムの挑戦が終わったら、ヤマブキシティに行こうと思います」
「ワシもそれがいいと思うぞ。じゃが、ふぅむ…タマムシジムのぉ……」
「?」
ちょっと待っておれ、と机の上や引き出しを漁り始めたオーキドからは目を離し、横目でジョーイの姿を確認する。
山積みになった資料が崩れる音に、博士、あとで片付けるかなぁと一瞬思いながら。
「あったあった、これじゃな」
「?植物園、ですか?綺麗ですね」
オーキドが示したのは、一枚のパンプレットだった。
表紙には『タマムシ植物園』の印字。映し出された色とりどりの花が咲き乱れる様はとても華やかで、手入れが行き届いている感じがする。
「タマムシの名所の一つじゃよ。今のジムリーダーは草花を好んでての、昂じて栽培や研究を始めたそうじゃ。彼女は草タイプのエキスパートじゃしな、攻略方法を探すついでにでも、一度行ってみてよかろう。それに、」
「?なんですか?」
「離れとるうちに、随分大きくなったな、。――この時期の植物園は、春の息吹く場所じゃよ。遠慮などいらん。新しい服を買って、着ていきなさい」
2009.06.19. up.
2012.02.23. 改