目を開けていられないほどの眩い閃光。
フィールド全体に迸る電撃を浴びライチュウが倒れていくのを指の隙間から息をつめて見つめていたは、審判のコールを聞いた後、深く長く息を吐いた。
疲れ果てた様を見せるリクに労いの言葉をかけ、ボールに収める。そして眉を寄せて俯いた。本当に、これで良かったのだろうか。
「おめでとさん」
「わっ!?」
ぽん、と頭を叩かれる。
びっくりして見上げると、マチスが見下ろしていた。
そして見上げるの、髪をわしわしとかき回される。
「なんだ、少しは嬉しそうな顔しろよ。おまえが勝ったんだぜ?」
「あー…はい。ありがとうございます。けど…勝った気がしないというか、ぎりぎりだったな、って」
「ったく、ガキのくせに難しく考えやがって」
ほらよ、と渡されたのは、オレンジバッチ。
太陽の形をしたそれは、ライトの光を反射してキラリと輝いた。
3つめの、ジムバッチだ。
ぎゅ、と握りしめる。
ひんやりと冷えたバッチは、の体温でほんのりと暖かくなった。
「何を考えてるかは知らねぇが、勝ったヤツが強い、それだけのことだ!」
「…ははっ!あはは!!」
腰に手をついて堂々と言い放ったマチスに、笑いが込み上げてくる。
突然の性格崩壊にぽかんと口を開けるマチスの正面で、腹を抱えては笑い続けた。
マチスを見ていると、なんだか悩んでいた自分が馬鹿らしく思えてくる。…というのは、ちょっと失礼か。
ひとしきり笑った後、浮かんだ涙を拭いながら、は見上げた。
「ねぇ、マチスさん」
「マチスでいい。あとお前みたいなガキに敬語使われると寒い、やめろ」
「ひどい。…じゃあ、マチス。強さって、何だと思う?地道に頑張ってれば手に入れられるもの?」
返ってきた答えは、単純だった。
「知らねぇ」
けれど頭を掻きながらマチスは続けた。
「俺の目指すものと、お前の目指すものは違うだろうよ。俺は道具や科学に頼ってでも、ポケモンが強くなりゃ十分だからな。お前はそうじゃねぇんだろ?」
「…うん。でも、」
逡巡すると、を見下ろすマチスの間に、汽笛の音が響く。
街中に響き渡るような轟音に思わず口を噤んだに、マチスは昼休みが終わる合図だ、と笑った。
低く、そして長く続く汽笛の音は、腹に響く。けれどどこか心地いい。目を閉じて味わう。――は、余韻が消える中ゆっくりと瞼を上げ、マチスに笑いかけた。
「やっぱりいいや。うまく言えないし。マチス、今日はありがとう」
「ああ。じゃあな。――…いや、待て」
さよなら、と通路へと走り出した小さな背中を、マチスは引き留めた。
どうしてそうしたのかは、マチス自身も分からなかった。それでも、何故か言わなければならないような気がしたのだ。たとえ意味の無い言葉だとしても。
「俺とお前は、また会うさ。その時俺は、ジムリーダーじゃねぇだろうな」
その言葉に、思わずは立ち止まった。
振り向くことはしなかった。けれど背を向けたままはっきりと呟く。
「私は、あなたが誰よりもクチバのリーダーに相応しいと思う」
返事を待たずに、再び走り出した。
クチバジムを出ると、街のどこに納まっていたのか、と驚くくらい大勢の人が海へと向かって歩いている。
その合間を縫って、は展望台へと進んだ。
大きく吸い込むと、なんともいえない、けれどつんとしたにおいが鼻を通った。そのまま息を止めてみる。視界がクリアになったような気がした。
そして、空を見上げる。
港町の太陽は、が見たどの太陽よりも眩しくて、大きかった。
2009.06.19. up.
2012.02.23. 改