リハビリに勤しむに朗報が届いた。
転送システムの一般利用が始まったというのだ。
ジョーイの言葉に、大広場でトレーニングとリハビリを兼ねたポケモンバトルをしていたはポケモンセンターへと急いだ。
頬を撫でる風が、視界をクリアにしていく。
自分の足で立てること、駆けられること。そんな当たり前だと思っていたことが、今はとても幸せだと感じる。
「――トキワのジョーイから聞いてるわ。各センターの準備も整っています。オーキド博士とも通信出来るわ」
視線を巡らすと、回復装置の隣に筒状の装置が新たに置かれている。
トキワシティのポケモンセンターでジョーイが言っていたように、治療としての利用が最優先であるようだ。
「ありがとうございます。じゃあ、まず博士に電話します。こっちの準備が出来たらお願いしますね」
「分かったわ。電話の使い方は?」
「大丈夫です」
受付のジョーイに礼を言って、角に設置されたパソコンに近づく。
電源を入れて、オーキドの電話番号を打ち込んだ。
「……オーキド博士」
通信の接続を待ちながら、最後に連絡したのはいつだったか、とふと思う。
オツキミ山に入る前だから、もう随分と前である。その間、一度も連絡をしなかったから、心配させてしまっただろう。
だけれど、事の顛末を言う気は無かった。命にかかわる危険な目に合ったと伝えたら、間違いなくこの旅は終わらされてしまうから。
――そして、これからも伝える気は無い。
「…しもし、もしもーし。おい、じゃろう?」
「あ!博士!!お久しぶりです。今、ハナダのポケモンセンターにいます。…すみません、全然連絡をしてなくて。ちょっと、いやかなり忙しくて」
「心配してたんじゃよ。まぁ、のことだからよっぽどのことは無いと思ってたがの。どうしたんじゃ?」
よっぽどなことがありました。心の中で呟きながら、は困り顔を作った。
近くで見れば不自然に感じる表情をしているだろうが、パソコン越しならばバレはしない。それでも嘘は慣れない。まして相手がオーキド博士なら、余計に。
「ピッピが見つからなくて。もう何ヶ月もオツキミ山に何度も行っているのですが、全然現われてくれないんです」
の言葉を聞いて、オーキドは両手を組んだ。
「ふむ…ピッピやピクシーは耳が良い上、警戒心が強いからの。一筋縄ではいかないじゃろうな。……そうじゃ、それなら岬の小屋のマサキの所へ行ってみるといいぞ。彼はピッピのことをよく知っておるからの」
「マサキ…って、転送システムの製作を手がけた?」
「そうじゃよ。おおそうじゃ、、我が研究所にも転送システムを置いたのじゃ。これでのポケモンをいつでも預かってやれるぞ」
ほれほれ、とオーキドが自慢げに指し示す先には、天井まで伸びる筒状の大きな装置。
センターに設置されたものと同じものである。
「ありがとうございます。じゃあ、これから送りますね。まずはハナダ、3番道路、そしてニビのポケモンセンターから送ります。トキワの森のポケモンは全て捕獲しましたが、トキワシティ以前のポケモンはまた捕獲しなおして届けますね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!どういうことじゃ」
「ニビシティのジョーイさんから、転送システムのことを聞いてたんです」
あの時のことを、かいつまんで話す。
手際の良さに首を捻っていたオーキドは、の話を聞いた後、満足そうに頷いた。
「分かった。感謝するぞ、。これで研究もよりはかどるじゃろう」
「あ。あと、レンが進化したんです。リザードになりました!……と、じゃあ、また連絡します」
電話を使いたい素振りをする者の姿に気づき、話を切り上げる。
話したいことは沢山あった。
ハクのこと、リクのこと、レンのこと。そしてまだ名前の無い、新たな仲間のこと。
でもそれはまたの機会で良いか、と思い直す。
「おお、元気での。、焦らず、自分のペースで旅をしなさい。心に余裕が無ければ、見えるべきものも見えなくなるのじゃ」
「…はい、分かってます。では、失礼します」
通話を切断するボタンを押す。
自分のペース、か……。
強くなるのには、何より経験が必要である。だから急いで経験を積もうとして、ペースを誤っていた。
経験は様々なトレーナーと戦うことで得られるけれども、戦う本人が楽しいと感じられなくなれば、その価値は半分以下になってしまうだろう。
強くなろうと思う心が、すべての基だから。
の後ろに並んでいた少年に会釈し、横を通り過ぎる。
「ジョーイさん、転送をお願いします」
病院に戻ったがはじめにしたことは、4匹目のポケモンの、新しい名前を考えることだった。
2009.06.19. up.
2012.02.22. 改
マサキに電ピカ設定を少しだけ盛り込んでみました。