「いままで、お世話になりました」
見慣れた研究所の前で、短い間ではあったが同じ屋根の下で暮らした家族同然の二人に向かって、頭を下げる。
「無茶をするんじゃないぞ。街に着いたら、ちゃんと連絡をいれるようにの」
「分かりました。ナナミさん、ホウエンに戻っても、」
「私は大丈夫よ。ライバルがいるもの、負けられないわ。ちゃんこそ、気をつけて。無理はしないでね」
潤んだ碧の瞳を見据えながら、頷く。
こんなにも暖かく優しい人達に出会えて、良かった。
「はい。じゃあ、行ってきます。―――レン、行くよ!」
「カゲェ!」
高らかに鳴いた声が、青空に消える。
初めての冒険にワクワク、と表現するのが一番的を得ているだろう表情と歩き方で、隣を行くレンの赤い体を横目に見て、宣言する。
「絶対、強くなろうね」
一緒に、強くなろう。
2009.06.19. up.