カントー学園 ジョウト編




「…なんだよ」
「なんでも」

女神の言葉を無碍にすることが出来ないわたしは、今までシルバーくんを見ていた時間の何パーセントかを早速ゴールドに当てることにした。
斜め前、とか斜め後ろとかだとチラ見できるものだが、真後ろとなれば体ごと後ろを向いてガン見する他ない。こいつ相手に女の子ぶるのも今更なので、背もたれ部分を両足で挟んで。

改めて見ると、顔、良いよね。騒ぎたくなる気持ちが分からんでもない。
でも人間中身だから!さんガキんちょには興味無いから!!

背もたれの上に両手を組んで、そこに顎を乗せじい、っと見上げていると、ゴールドが落ち着かない感じに視線をさ迷わせたあと、ぼそりと呟いた。

「…あのよ、」
「うん」
「弁当、悪くなかったぜ」
「あ、食べたんだ。そっかー…」

なに、ほっぺたうっすら赤くして。
いっちょまえに青少年ぶりやがって。っていかん、ここは誰に見られたかが重要なんだ。これから先どうからかうか。

「ね、誰と食べたの?ハートまみれのピンクお弁当」

好奇心のままに続けるとゴールドはかっと赤くなって、それからべたんと勢いよく机に伏せた。うわ、いったそー…。絶対おでこぶつかってる。

なんだこの反応。……もしかして女の人だったとか?
でもわたしが作った弁当を持ってったあたり、そういう相手ではないのかな。いやいや、どうでもいいんだけど。

「おまえさ、分かっててやっただろ?先輩にすっげえ笑われたんだけど」
「いや、お弁当箱のことは本気で忘れてた。ごめん」

心にも無い謝罪をして。耳まで赤いよ、とからかって。
やっぱ、ゴールドとはこの距離感が楽しい。

「ホームルーム始めるぞー。学級委員前出て来いー」
「呼ばれてるぜ」
「そういやわたし学級委員だっけ。最近仕事無いから忘れてた」

でも先生、そういう時は何やるか、関係者に前もって話通しといてもらいたいもんだ。
進行係がこの60分間何をやるか理解してないようじゃ、わたしが無責任みたいに思われちゃうじゃない。

時期柄、体育祭の種目分けだろうけど。
このクラスは積極的に参加してくれる子がほとんどだし、運動神経も負けず嫌い精神もなかなかの粒揃い。モチ、同級生相手には負ける気はないッスよ。

にしても…。
あいつには玉つき種目与えとけば満足するだろうし……、シルバーくんは、何を選ぶのかな。








なんでゴールデン後のドラマって、こんなに面白いんだろう。
目の前の液晶テレビの中では、一人の美少女を巡って二人の男が…というありきたりなシチュエーションを一癖捻った愛憎劇が繰り広げられている。

この時間帯のドラマはシリアスで妙にリアルなんだよね。
9時台の逆ハーレム☆ラブコメを憧れる気持ちもあるけど、こっちの方が登場する人たちの気持ちが人間的…というか複雑で、共感できる。

…あ、ばか!なんでそこで引いちゃうかなマサユキ。
ハナはあんたの告白をずっと待ってんのに!!

「今日一日、どうだった?」
「なーんも無かった。シルバーくんほんと格好良い。もうダディクールって感じ。ダディークール、じゃなくてダディクールね」

はぁ?っと返してきたアカネにニュアンスの違いを根絶丁寧に説明してあげると、うっさい、と枕が飛んできた。
いたっ、せめてそこの可愛くて柔らかそうな人形にしてよ!枕より近くに置いてあんじゃん!!

「何言ってんの。あんたにこの子ぶつけたら、この子が穢れるでしょ。そんなこと私がするわけないじゃない」
「アカネより穢れた人間がどこに…って痛っ!シャーペンはいかんて!尖っとるでんがな!!」

変な言葉、とアカネが呆れた声で言えばこの寸劇は終わり。
まあよく毎日やってるなと自画自賛。まあわたしとアカネの仲の良さを証明するもんだと…ボールペンも不可!!

「お弁当箱、返してもらったんでしょ?」
「うん。洗って返すって言われたけど、男子寮でピンクの弁当箱を洗わせるのはさすがに忍びないと思ってお断りしました。さっき洗って、今乾燥機の中」
「あら律儀。で、どうだって?」

どうだ、って。

「悪くなかった、って言われた。……シルバーくんに食べてもらいたいなぁ。でもそういうの嫌いかも。あーもう、分かんない!!アカネ分かる!?」
「そういうのは話しかけるのに成功してから言いなさい。部活の差し入れとして、ゴールドくんに渡してもらったら?『二人分』って言えば気を利かしてくれるわよ、きっと」

そういうもんかなぁ。
まぁ、アカネが言うならそうなんだろう。恋愛に関しては、経験者の余裕ほど心強いものは無い。

「あんたには乙女要素をママのお腹の中に置き忘れてきたんじゃないかって時々心配になってたけど、少しは青春らしいことが経験できてよかったじゃない」
「……泣いていい?」
「いまからでもイメージ変えてけばいいのよ。じゃあ次はね、」

 

2011.01.27. up.

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