なんかあん時ゴールド変な顔してたな。
まあ今はいいや。上の空でこの子と向き合っていては、失礼に値する。
おばちゃんの手作りプリンを色々な角度から見てから―やっぱりカラメルとカスタードの黄金比を目で味わえる斜め下からのアングルが最高だわ―スプーンを刺す。
「…なんか、どうにかしてパンチラ見たいおじさんみたい。ほら、フィギュアを斜め下から」
「アカネ、そういうことは思っても言わない」
中庭だからって、誰が聞いてるか分かんないでしょ。
昼休み、本当にプリンを持ってきたゴールドに奇声を上げなかったのは理性の勝利。
夢の一品を前になんで、え、どうやって、と慌てるに、じゃあこれで、と再び学食に行こうとしたゴールドに思わず弁当箱を袋ごと投げつけてしまったために「もってけドロボー!」、の昼飯はなくなってしまったのだ。
今更自分の行動の意味不明さと痛さに心折れそうだけど、あの瞬間は感動してしまったのだ。
今だって胸が張り裂けそうだよ。おばちゃんの愛情に。
「なんで本当に持ってっちゃうかなー。ばかゴールド。お腹減ったっての」
「プリント運ぶお礼がプリンなのにね。まぁいいんじゃない?わたしはゴールドくんがどんな顔でのお弁当を食べてるか、想像するだけで笑えてくるんだけど」
「は…さまの手作り弁当にケチつける男がいると思って?」
「じゃなくて、お弁当箱」
アカネの言葉に今朝の一連の作業を思い起こす。
ご飯は寮で食べるのを貰って、買いだめしておいた食材を切って炒めて、…何に入れたっけ。
…今日の弁当箱、あれ、だね。
女子寮の新入生歓迎会で貰ったピンクのハート模様のお弁当箱。あまりの可愛さに貰った傍から押入れに突っ込んだのだが、先日数年ぶりに発掘され、懐かしさになんとなく使ってみたのが今日。
今日。
「うっわー…申し訳ないわ」
「その締りの無い顔、どうかしたら?」
「いやー申し訳なさすぎて涙が出そうだわー」
まあ、仮に見た瞬間に開けるのを止めたとしても、誰かにゴールドが!ピンクの!ハートにあふれた!弁当箱を持ってるところは見られるだろう。
はっはっは、ざまぁ!!
「ねぇ」
「ん?にゃに」
「プリン食べてからでいいから。あんた、本当にゴールドくんと何もないの?」
「何って、何?」
あー幸せ。ほんと、おばちゃんのプリンは幸せを運ぶプリンだ。
「私思うんだけどね、あんたにはシルバーくんより、ゴールドくんの方が似合う」
「ごふぉお!?」
「うわっ、汚っ!」
ひ、一口分噴き出した。
もったいなっ、じゃなくて、
「はぁ!?わたしとゴールドが!?そりゃあの人と私は釣り合わないって思うけど、ゴールドまで身を落とす気はないわ!!」
「ゴールドくんがどれだけモテてるか、知らないとは言わせないわよ」
「…アカネさん、女は節穴なんですよ」
「あんただけには女を語ってほしくないわ」
「で、でも、」
わたしがあいつを男として見てないように、
あいつもわたしを女として見てない。 ……本当に?プリントを半分持たせてくれなかったのは、
「心当たり、ありそうね」
「うーん…でもあいつ、シルバーくんに声掛けるように言ってきたよ?」
「女としてみることイコール恋愛関係、とは限らないもの。ま、しばらくはシルバーくんシルバーくん言わずに、周りをもっと良く見てみたら?」
女神さまの忠告は、聞かずにいられない何かがある。
でもねぇ、ゴールドが話しかけてくるのは、わたしが女っぽくないからだよ。<