「アホくさ。そんなに気になるなら、さっさと話しかけりゃあいいのによ」
後ろの席の住人がぽつりと呟いた言葉に、は振り向いて歯を剥いた。
おおこわ、とそいつは大げさに身震いして、それからにやにやと笑う。
「…あんたって、ほんっとムカつくやつよね」
「そりゃどーも」
瞳の色と爆発した前髪が特徴的なコイツは、冗談でもなんでもなくゴールドという名前だ。
これで学年問わず女の子にモテるってんだから、世の中分からないもんだ。
今だって、視線が痛い。あーまた呼び出されるかな。誤解解くの、めんどうなんだけど。揃いも揃って節穴ばかり。嫌になる。
「ほら、行っちまうぜ?」
「だから何」
アノヒト次移動教室なんでしょ。
知ってるよ、そんなこと。
主語がないゴールドの言葉が暗に言っているのは、わたしの気になってる人。
情熱的な髪色をしているけど中身はとびきりクールで、ゴールドと正反対。
私とあの人は同じコースで、クラスだけでも10以上ある中、今年初めて同じクラスになった。
ついでにゴールドとは3年間同じクラスで、なんだかんだ縁だけは深いのかもしれない。1年目はあんまり話をしたりしなかったけれど、まぁ3年も一緒のクラスだったらそれなりに親しくもなるわけで。
一般的な学校とは違って、この学校は選択科目の時間がありえないくらいに多い。
だからおんなじクラスになったって、朝と帰りとホームルーム活動以外に全く顔を合わせないことも有り得るし、だから一年まるで話さないクラスメイトだってざらにいる。
ゴールドには、好きも嫌いもない。ただまぁ、狙ってもないのに選択科目がかなり被ってるし、目に付きやすいから。
って、ゴールドなんてどうでもいいんだって。今わたしにとって重要なのは、そいつの親友。
わたしの気になる、というか、好きな人は、シルバーといいます。