店内には昼前だからか、割と人がいた。
あっつい、とマフラーとニット帽と手袋とコートを脱いで腕に抱え、カウンターの上のメニューを見て、は目を輝かせた。
購買意欲を刺激するPOPに、確実に購買意欲を刺激されている。店からしたらホント単純でありがてえ客。次の言葉が容易に想像できる。
「どうしよ。暖かいものが飲みたかったんだけど、少し早めのお昼でもいいかな」
「いいぜ。オレも腹減ったしよ」
新商品か、定番か。
議論しながらカウンターに近づくと、いらっしゃいませー、とこちらに気づいた店員が声を上げる。
第一印象、乳がでかい。いや、そんだけだって。ジト目のから顔を背ける。
「いらっしゃいませこんにちは、ご注文はお決まりですか?」
「えっと、」
「こちらは新発売の商品です。セットでいかかでしょうか。」
悩む暇を与えないマニュアル対応に、がぴしりと固まる。…仕方ねえやつ。
「これとこれ。セットで」
「お飲み物はお決まりですか?」
「コーラと、」
「ミルクティ、ホットで!!」
再起動したらしいが、十分すぎるほどハキハキと注文する。
軽く引き気味な店員に、やっちまった、と青ざめた顔でオレに助けを求める。どうしようもねえよ。ま、良くあることじゃねえか、あんたの場合はよ。
「…円です。トレーの前で少々お待ちください」
ホットミティ、オッケーです、ポテトあと15秒ーとにわかに騒がしくなった厨房を眺めながら、は消え入りそうな声で呟いた。
「…引かれた。確実に」
もうお嫁にいけない、と、よよと泣く。
あのミルタンク店員に嫁にしてもらうつもりだったのか。
「なんでドリンク注文の時だけ元気になんだよ」
「いや、初心者だと思われたくない、的な?」
「意味分かんねえ。持ってくから、座っとけよ」
「えー…なんか嫌。半分持たせて」
どう見たってトレー一つじゃねぇか。そう言うと、じゃああっためておくわ、椅子。と意味不明なことを言いながらは身を翻した。
二人用のテーブルを選んで、窓側か通路側か、自分の座る椅子を吟味しているをぼんやり眺めていると、お待たせしましたーと声が掛かった。
トレーを持っての待つテーブルに向かうと、あ、と声を上げてが立ち上がった。マジか。
「あっためておいたよ」
「いらねえよ」
がーん、と背景に文字を作るほど、見るからにショックを受けた風のの頭をトレーで小突く。
「早く食おうぜ」
選んだのは、定番と新商品。
外れたときのダメージを、定番で補おうという魂胆。近未来チックな銀色の箱を開けて、割と高さのあるハンバーガーに齧り付く。
じぃ、と睨むように眺めているにほらよと差し出せば、・lt;script language="JavaScript">
ケのように口を開けてぱくついた。
「……カレー?」
「カレーだな」
ハンバーガーなのにカレー。
冒険したなと思うけど、食べてみればなかなか悪くない。
「うーん…ありっちゃありだけど、ないっちゃない。あ、コーラもらっていい?」
「一口100円」
「ケチ」
そう言いながらも飲む。
どうせ請求されないのを分かってるからだ。1、2、3秒。まだストローから離れない。あんたの一口どんだけだよ。相変わらず遠慮がねえ。
「…ぷは。でもなんで冷たいの頼むかな、こんな寒いのに」
「自分に聞いてみろ」
「揚げたてポテトに超合うよね。はい、おかえし」
あーんと差し出すのは、小金色のポテト。
セットだから当然オレのにもついてる。まぁ、食うけど。
「…うめえ」
「ね。――午後からどこ行く?」
「行きたい所、あんだろ」
「うーん…あ、本屋さん行っていい?取り寄せしてた本、受け取らなきゃ」
児童書?と素で返すと、違う専門書!と眉を吊り上げる。
そういや、タマムシ大学の期待の新星だとか聞いたことがあったような無かったような。信じらんねえけど。
「もう食わねぇのか?」
「も、お腹いっぱい。どうしちゃったんだろ私、胃が小さくなったのかな」
普段飲まない炭酸飲料飲むからだろ。
結局半分以上オレが平らげて、席を立つ。
「あ、ちょっと待って」