「ダストダス、お行きなさい!」
「行け、バタフリー!」
ノボリさんの一匹目はダストダス。タイプ相性は悪くない。
実はイワパレスだったらそこで詰んでた。バタフリー、岩4倍。リザードン、岩4倍。ギャラドス、岩2倍。
「ダストダス、ベノムショック!」
「バタフリー、ねむりごな!!」
先手を取ったのはダストダス、アレな色をした毒液がバタフリーを襲う。
しかしバタフリーはベノムショックを受けながら、翅を大きく羽ばたかせてダストダスへと鱗粉を飛ばした。
そして、過たずダストダスへと降りかかる。
「やはり眠らせてきましたか!」
「特性ふくがんによるねむりごなは、脅威の命中率97パーセントだからね!!――さあバタフリー、今のうちに舞って舞って舞いまくるよ!!」
BW環境の申し子ならぬ申し技、ちょうのまいを指示する。
ちょうのまいは特攻と特防と素早さを一気に上げる超強力な技だ。バタフリーの火力を上げるのにうってつけである。
使い手としてはアデクさんのウルガモスが有名だが、同じ蝶蛾であるバタフリーもモルフォンもアゲハントもドクケイルもアメモースも覚える。あと何故かドレディアも覚えるよ!!
ダストダスが眠っている間に、積めるだけ積む。
ここではギギギアルをむしのさざめきで確定2で落とすために、3回積んでおきたいのだが。
――って言ってる側から起きるか!
「だけど遅い!バタフリー、サイコキネシス!!」
技の出は素早さの二段階あがったバタフリーが当然早い。
そして2回積んだバタフリーのサイコキネシスは、ダストダスを確定1で落とす!
「……って、え、えぇ!?」
「ふふ、あなた様がバタフリーを育てているとジャッジ様にお聞きした時からこうなることは目に見えておりました。…そうです、今のダストダスの持ち物は、きあいのタスキ!!」
「な、なんだってー!」
AA略!!
「ダストダスの持ち物はくろいヘドロ、それはサブウェイ規則(ルール)だって言ってたでしょーが!!」
「それは一般のお客様への規則(ルール)。昼夜を問わずバトルサブウェイに挑戦し、スーパーの実力がありながらノーマルトレインを周回しバトルポイントを根こそぎかっさらっていく様は例外でございます」
「それって職権乱用っていいません!?」
「いいえ、一昨日、会議において満場一致で可決されました。恨むなら遠慮を知らないご自身をお恨みください。――ダストダス、どくどくです!」
「っ、バタフリー、おいかぜ!」
「次に繋げるおつもりですか。いいでしょう、ベノムショック!!」
どく状態のバタフリーに、ベノムショックのダメージは2倍となる。
耐え切れず、バタフリーは地に落ちた。
持ち物は偶然にも同じ、きあいのタスキ。これまでの車両で何度も助けられたが、ここでは使いこなせなかった。使いこなせなかったのは私の責任だ。
「ありがと、バタフリー!リザードン、おねがい!!」
瀕死となったバタフリーを戻し、代わりにリザードンを出す。
は短く息を吐き、そして大きく吸った。
おいかぜは4ターン続く。バタフリーの残したおいかぜが続く内にどこまでいけるか。
「リザードン、かえんほうしゃ!!」
素早さで勝るリザードンの一撃が、ダストダスに襲い掛かる。
万全の状態のかえんほうしゃを、HP1のダストダスが耐えられるはずもない。ダストダスは過たず目を回し、床に座り込んだ。ノボリさんがボールに戻す。
――これで残りは2。次に来るのはギギギアルかイワパレスか。ここでギギギアルが来たら確実にオッカ持ちだ、かえんほうしゃを確実に耐えてくる。イワパレスだったら、ギギギアルはオッカ以外の何かを持っている。
「ギギギアル、出発進行!!」
「…ふふ、いらっしゃいませギギギアル、待ってましたよ!――リザードン、めざめるパワー!!」
指示と同時にリザードンの体が発光し。そして技を発する直前に一層輝いた。
リザードンから放出されたエネルギーが、過たずギギギアルへと襲い掛かる。
「!」
その一撃で、ギギギアルが地に落ちる。
…ふはは、計算通りだ!バタフリーで落とす予定だったけど、ねむりごなが外れた時のことを考えててよかった!
「この威力…、タイプはじめんですか?」
「えぇ、えぇ、そうですよ!このためだけに粘りました!そしてわずかに足りない火力はジュエルで補いました!これ以上語れば長くなるので語りません!!さぁ、最後のポケモンを!!」
めざめるパワーのタイプを地面にするためだけに、特攻と特防のVを諦めたのだ。そしてめざパじめんを最大威力で発揮する4V2Uなど社会人には粘れなかった、から、それに順ずる何かで妥協してある。具体的に攻撃とHPと素早さが犠牲になった。
結果、リザードンはS実数値でギギギアルをぎりぎり1抜けられないという絶妙なラインにいる。そのためおいかぜで素早さを2倍にしているのだ…ってほら語ると長くなるからぁ!おいかぜが吹いている内に決めたいって言ってるじゃんねぇ!!(言ってない)
「言ってくださればわたくしが以前育てたリザードンをお貸ししましたのに。勿論めざパじめん威力70の」
「あーあーあー聞こえないぃ!!自分で育ててこそ意義があるしおすし!」
「それもそうでございますね」
そんなにあっさり撤回されると、自慢にしか聞こえないよ!
勿論そんなつもりがこれっぽっちも無いのは分かってますがね!!そうです僻みですっ!!
「おいかぜは残り1ターンといったところでしょうか。――行きなさい、イワパレス!!」
「うわぁこの人やっぱ計算してた。――リザードン、かえんほうしゃ!」
「イワパレス、ストーンエッジ!」
先に動いたのはリザードン。
しかしリザードンのかえんほうしゃがイワパレスを落とすことは叶わず、そしてイワパレスから発射された石刃がリザードンを襲った。
計算するまでもない、確定1のダメージがリザードンを襲う。
「…ッ、ありがとリザードン!おねがい、ギャラドス!!」
リザードンを戻し、ギャラドスを出す。
急所にでも当たらない限り、HPと防御に努力値を全振りしたこの耐久型ギャラドスが一撃のストーンエッジで落ちることはない。
万に一つどくどくを打ってくるとしても、持ち物がラムの実であるため一度なら無効に出来る。
けれどギャラドスの攻撃に振ったのはわずか6。かえんほうしゃのダメージを含めても、弱点を突く“たきのぼり”一撃で落とすことはできない。必要なのは2ターン分の時間。急所に当てれば1ターンでいけるが、相手の技が急所に当たれば2ターン目は無い。
「勝者となるのはあなた様か、わたくしか。もう分かっているのでしょう?」
「寝言は寝ていってね、勝負の行方は最後まで分からない!」
無振りとはいえ、ギャラドスの素早さがイワパレスに劣ることはありえない。このタイミングでおいかぜが止んだってそれは覆せない。
――ここまで来て、諦めるかよ。
「ギャラドス、たきのぼり!」
「イワパレス、ストーンエッジ!」
双方ともに命中。イワパレスはおそらく赤ゲージまでHPを削られているはずだ。対してギャラドスのHPは半分強になった。だけど次のターンで決められる。仮に外しても次の1ターンは耐えられる。…って、
「また、ゴツゴツメット…ッ!?結局変えたのはダストダスの持ち物だけってわけ!?」
「変える必要などないでしょう?あなた様の物理型好きは、何年経ってもお変わりないようですから」
HPに振った分、その反動も大きい。ゴツゴツメットは直接攻撃の技を当ててきた相手を、最大HPの六分の一削るアイテムなのだ。
これでギャラドスのHPは半分を切った。次の攻撃がストーンエッジであれば耐えられない。そうでなければ耐えられる。そんな瀬戸際である。
いつか経験したシチュエーションに、目の前の光景が被る。
あの時は勝った。だけどあれはまだ3vs3だったからだ。今はポケモンも技も、努力値配分も持ち物も経過ターンも、なにもかもが違う。
「ラス1同士…行くしかないかっ、――ギャラドス、たきのぼり!」
「……っ!」
バトルサブウェイの中にある喫茶店の一角で、はぐだっていた。
廃人かそれに順ずる人間しかいないサブウェイに女性人気が出そうなオシャレなカフェ(笑)があるわけもなく、雰囲気はビジネス街のそれや立ち食い蕎麦屋に近い。
ただし負けて帰ってきたトレーナーが主な客層なので、こうして腐っていても店員はそっとしておいてくれる。そういうわけで、も好んで利用している。
頭を占めるのは、先程行ったバトル。
サブウェイ規則(ルール)では、私の勝ちだ。
だけど、だけど…、
「ゴツメのダメージで、こっちも落ちるなんて…」
何この試合で勝って勝負に負けた感。
最大のミスは、イワパレスの努力値振りを見抜けなかったことだ。これまで対戦したイワパレスの経験から、あのイワパレスの努力値はH(HP)とA(攻撃)に振ってあるとばかり思っていたのだ。しかし実際はHとB(防御)。たきのぼりなんて余裕で受けた。
そして、6振り程度の火力では同じく耐久型のギャラドスのHPを計算通りに削っていなかったのである。――ギャラドスをもっとよく観察していれば分かっただろうに、今までの対戦の記憶に引き摺られ、ダメージを正しく見極められなかったのだ。
今から思えば、黒ボスの“勝者となるのはあなた様か、わたくしか。もう分かっているのでしょう?”というセリフも、ミスリードを誘うための言葉だったわけだ。こっちが計算しながらバトルしているのを知った上での。
「だけど非接触のじしんじゃあ、高乱数だけど耐えてただろうね。他の技は何だったの?」
「でんじはとー…、ドラゴンテール…」
「( ´ー`)」
「うわうっざぁ…」
って、
「…白ボス、なんでここに?」
いつの間にか隣に座っていたのは、白い方のサブウェイマスターだった。
全く違和感なく会話してたけど、なんでいるのさ。通常通りひっきりなしに発車のアナウンスが流れてることを考えても、今は確実に勤務時間帯だろう。しかも黒ボスがトレインが駅についてすぐテレポートで戻っていったあたり、かなり忙しいんじゃないだろうか。
「きゅーけーちゅー。大掃除するからってノボリに追い出されちゃった。偉い人が明日来るんだって。あ、ぼくカフェオレね」
「手伝えよ」
「が手伝ったら、きっとノボリ喜ぶ。だからキミが行って?」
「答えになってねぇ…ですよ。それから前にも言いましたが、いい歳した男が首傾げないでください。条件反射で萌える自分に欝になるんですよ」
「ぼく、にだったら萌えられてもいいよ!というか萌えて!!」
「ハハッ…もげろ」
ちらと横目で白ボスを眺め、吐き捨てるようにそう言うと、白ボスはしゃっと股間を隠した。
視線を逸らし、組んだ腕の中に顔を埋める。
「…乾く暇ねぇってやつか……ちくしょう」
「ねぇ、キミぼくのことどう思ってるの。一度ここではっきりさせよう」
「うん…どうでもいい……」
あー…この顔見てるとまた思い出して欝になる。
大体初代コンセプトだってのに、使った技で初代からあったのは“ねむりごな”に“かえんほうしゃ”、“たきのぼり”、それから“サイコキネシス”だけだ。あとは全部第二世代以降の技。
だってのに引き分け同然の結果だというのは…はぁ。
「戻ってきてー。あとテンション下がってるからって下ネタに走るのは女の子としてどうかと思うよ?」
「うん…生きててごめんなさい……」
「聞いてないね。あ、でもね、ぼくモニターで見てたけど、よく頑張ってたと思うよ?」
「…本当?わたし頑張ってた?」
顔を上げて、顔を窺うと、白ボスはにっこーと極上の笑みを浮かべ、「うんうん。頑張ってたよ!」と何度も頷いた。
…クダリさんまじエンジェル。地上に舞い降りた最後の天使。
「バタフリー、バトルにはあまり向いてない!だけど補助技うまく使っていいバトルしてた!ノボリの道具が変わってなかったら、もっといいとこまで行ってたと思う!!」
「…ク、クダリサンステキー!ダイテー!!」
「だけど勝負には負けたよね!」
……。
………。
「…首吊ってきます」
「えぇっ、だめっ!自殺、ダメ、ぜったい!!」