Lucid Dream




「ご乗車、大変お待ちしておりました。…おや、メンバーを変えたのですね?」
「え、あ、まぁ…」


ボールカプセルの柄を変えたからか、出会って早々バレた。
いったいこの人ってどこに目をつけてるんだろう。

最近イッシュでもボールカプセルが流行りはじめたおかげで、シンオウから取り寄せなくても色々なシールを楽しめるようになった。私も愛好家の一人で、ちょくちょく貼り替えてはいるし、新作を試した時には同じ愛好家に声を掛けられもする。だからって人のシールの位置まで把握しているのは正直気持ち悪いと思う。

一向にバトルを始める素振りを見せないため、諦めて腰のモンスターボールを取って突き出す。
…だから腰のモンスターボールって卑猥な言葉じゃないよ?しかも取るなんてしたらいけないよ!おねえさんからのお願いだからね!!

あちらからも伸ばされた手に(今日も憎々しいほど長い腕だ)、ていっと叩きつける。
しかしポケモンに対してだけお優しい彼は、それを一つ残らず受け止めて、中身をじっと見下ろした。


「ふむ…、リザードン・ギャラドス・バタフリーと。4倍弱点パーティでございますか。わたくし、ドMでございますかとお聞きする以外に言葉が見当たりません」
「違います。原点に帰っただけです。赤時代のパーティ組んだだけです。勘違いも甚だしいです」
「しかしわたくしも肉食系と自負しておりますので、あえて言いましょう。あなた様はマゾでございますか?」
「だから違うって言ってんだろ人の話聞こうよ」





よく分かる解説だと思った?
残念、釣りだよ!!――よく分かる様に説明できるなら、私がしてもらいたい位だ。

だから、近状報告をするので、誰か整理してまとめて説明してください。


誰に言っても信じてもらえないだろうから、こっちでは誰にも言ってない。
私は、世界を二つ股に掛ける女である(ドヤァ

未だに何がどうなってこうなったのかは分からないが、私は、生まれた世界とポケモン世界を行き来できるようになった。 そして二度目のトリップでは21両目にいる間だけ引っ張られたにも関わらず、回数を重ねるごとに時間と行動可能範囲は伸び、10回を越える頃には自分の意思である程度行き来できるようになっていた。

ちなみに、初めて渡った時の記憶は、二度目のトリップを迎えるまではごっそり消えていた。二度目だって夢だと思った。が、それが三度、四度と続けば、いい加減受け入れざるを得ないと諦め、現在に続いている。
こちとら小学生からのRPGゲーマーだ、ファンタジー展開への慣れは人より強い。


何故駅員に親しくされていたのか、それは私が渡った先がゲーム“ポケットモンスターブラック&ホワイト”の“主人公”の立ち位置だったことに起因する。
シナリオ自体は20時間余りでクリアし、それからゲーム時間がカンストする程度にバトルサブウェイに通っていた私(主人公)は、駅員からしたら度が過ぎる程の常連客だったわけだ。道理で名前を覚えられていたはずだ。

そして、DSの電源をつけているかどうかに関わらず、この世界には私そっくりの人間が存在し、そして生活している。私が渡った時だけ、中身が私になる。
――不思議なことに、私が渡ってようといまいと、こちらの人は少しも違和感を覚えないらしい。プレイヤーが私だからだろうか。しかしこちらの知識や、私でない時の記憶は引き継がないので、一部の人にだけは事情を説明し、こちらでの生き方を教わっている。

こういうのも成り代わりといっていいのだろうか。グーグル先生に聞いてみてもよく分からなかった。しかし重要なことは、私が死んでいないということである。


それから、あっちとこっちの世界の時間の進み方は複雑なようで、午前2時に渡った先が午後4時だったりする。戻る時は、どんなに長くあちらにいようと毎回必ず“バトル1回分”の時間を経て戻る仕様となっている。
これは以前、一度も成功しなかったにせよ乱数調整に手を出したことが原因かもしれない。……DSの時計をいじったんだ、6Vメタモンを手にしてみたくて…十中八九出てきたのは0Vピッピだったけどね!!


ひとまず説明はこの位でいいだろうか。
私にとっても、3年経った今でも未だに良く分からないことばかりなのだ。改めて分かったことがあれば、また報告しようと思う。


話は変わるが、昔、二つの世界に生きる女性をメインにした外国映画があったはずだ。予告しか見たことがないが、たしか眠ることで二つの世界を行き来していた。 その人が最後どういう結末を迎えたかは知らないが、私は、楽しめるだけ楽しむことを選んだ。

ただ、今はこの世界にいるときは、生まれた世界で出来ないことはやらないことにしている。例えば遅刻しそうだからテレポート、サイコキネシスで階段とばし、などは、したい時もあるがしない。混合して、生まれた世界でやらかしたらそこで試合終了だから。


けれど、ひとつだけ確信はある。
あのバトルビデオを消した時、私は行き来できなくなるのだ。試してはいないが、そんな気がする。これが女の勘ってやつなんだろう。…そういうと当たる気がしないが(女子力の低さには定評がある)、しかし確信している。
だからあのビデオは、1度目のトリップから3年経った今でも消していない。ゲームソフトの電池と私の寿命、どちらが先に切れるかは分からない。その時自分がどちらにいるかも、私自身がどうなるかも分からない。
――だがしかし、考えて分からないことは考えないことにしている。だからこれは今のところ放置案件である。


あ、でも、ただ一度だけ、勢いでバトルビデオを上書きしようとしたことがあった。

あれはピクシー@こだわりスカーフ・カイリキー@こだわりハチマキ・トゲチック@こだわりメガネによる“ゆびをふる”縛りでサブマスの黒い方を撃破した時のことだ。 あの時の衝撃は忘れられない。そして衝撃のままにバトルビデオを上書きしようとしたが、黒ボスに関節を決められて叶わなかった。
この話は、おいおい話せればと思う。私の話術では三分の一も伝えられないが、映像があれば抱腹絶倒間違いなしだ。とりあえず私は思い出すたびに翌日の腹筋が割れる。 しかも白い方のボスが業務用ビデオをこっそりダビングしてくれたおかげで、映像は今も手元に残っている。黒ボスにバレたら殺されるだろう。もちろん白いボスが。


ちなみに、シンオウ地方限定で流行していたボールカプセルを海を越えたこのイッシュで流行らせたのは、この私である(ドヤァ
一般的にはサブウェイマスターの白い方がテレビの前で使ったのがブームのきっかけとなっているが、その白い方に入手したばかりのボールカプセルを奪われたのは私なんだから私がきっかけでおかしくないはずだ。


あぁそうそう、言い忘れていたが、私は今、シングルトレインの21両目にいる。 トリップのきっかけは“サブウェイマスターに挑むこと”だから、始まりはいつもこんな感じだ。
初代ナツカシスパーティにしたのは思い出に浸りたいからだってのに、いい加減始めてくれないだろうか。


「聞いていらっしゃいますか!?大体あなた様は以前から自覚というものが…、」
「聞いてないので早く出発進行!してくださいよもう」


始まりそうにもないから、今日の私のパーティを紹介しようと思う。冒頭でも言われたが、バタフリー・リザードン・ギャラドスである。
特にバタフリーちゃんには、皆ニビジムハナダジムでお世話になってると思う。 私は赤でヒトカゲを選んだし、黄は勿論ピカチュウだから、当然のようにニビジムで苦労した。そんな時はバタフリーちゃんのねんりきが火を噴いたものだった。 ――当時はマンキーがトキワの左にいるなんて知らなかったし、黄になってニドランのけたぐりの覚えがめちゃくちゃ早くなってるなんて知らなかったのだ。
耐久の脆さからすぐ落ちちゃうから、幼いなりにシビアだった私は捨てる!もう捨てる!って言ってたけど、結局グリーンとの最終決戦まで一緒にいた。その直後のアニポケだよ。バイバイバタフリーだよ。あれはもうね、私に死ねと言っていたね。


「わたくしの口上が聞きたいのですか?」
「あーはいはい、聞きたいです聞きたいです」


そうそう、私の人見知りはこの異次元体験の中でどこかに旅立っていきました。今のところ帰ってきてません。
もともと何故かトレインの中ではテンション高くいられたのだが、その内に駅構内なら、になって、最後はどこでもこのテンションになっちゃったよ。こればっかりは双子のおかげだと思う。いっろいろと度胸付けてくれたしさぁ!全然嬉しくないけど!!


「本日はバトルサブウェイご乗車ありがとうございます。わたしくサブウェイマスターのノボリと申します!――さて次の目的地ですがあなたさまの実力で決めたいと考えております。ポケモンのことをよく理解なさっているかどんな相手にも自分を貫けるか…」


あ、でも就活でまったく緊張せずに済んだのとそれなりの社会常識を教えてくれたのだけは恩に着る。社会人になって一年目のくせに肝が据わっているために、キミはベテランの風格あるねぇなんて上司に言われたしね。うっせぇ黙れ!!…あ、違うよ?上司にじゃなくて目の前の黒い人に言ってるんだよ?


「勝利もしくは敗北どちらに向かうのか……では出発進行ーッ!!」


さてと、近状報告はこれくらいでいいかな。
さあ、誰か説明をお願いします。

2012.03.22. up.

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