「あ、棄権します」
「却下です」
「マジですか」
「マジです」
最近の悩み・最近駅員さんがフレンドリー過ぎるんですが客をなんだと。
3周目6両目での途中下車をお断りされたは、震える手をノーマルダブルトレインの7両目への扉に掛けた。
余裕そうに見えて、実は初めての挑戦である。手が震えているのも内心で駅員を放送禁止ワード満載で罵倒しているのも致し方ない。なぜなら6両目で降りるつもりであったからだ。
ゲーマーとしてのはどちらかといえばダブルバトルを得意としていたが、トレーナーとしてのはシングルバトル専門を貫いていた。残念ながら、一瞬一瞬で状況が変わるバトルの中で一度に二つ指示を出せるほどの処理能力は高くなかった。
今日ダブルトレインに乗車したのも、ただ単にバンギガブ(通称砂ガブ(ガブリアス・特性砂隠れ(天気が砂嵐の時回避率が上がる)&特性バンギラス・特性砂起こし(場に出るだけで天気が砂嵐になる)/厨パ中の厨パ)で俺TUEEE…じゃない、トレーナー御用達のバンギガブを間近で見てみたかっただけで、サブウェイマスターと戦う気はまるで無かったのである。ちょ、扉閉まらないで。止めて、二人だけにしないで。
対面する、白を基調とした方のサブウェイマスター。正直本気で怖い。黒い方も怖いが白い方が何故かより怖い。
彼のパーティも技構成も個体値も持ち物も全て覚えているとか言えば一般的に怖がられる側はこちらだろうが、怖いものは怖いのである。
「あのね、ずっと待ってた」
そう言って、くしゃ、と嬉しそうに微笑むサブウェイマスター。
…なにこれギャップ萌えを狙ってるの?あざといなさすがサブウェイマスターあざとい。
嫌だ嫌だやめていっそ殺してと叫ぶ内心を抑え込み、はそれぞれの手でボールを掴み取った。こうなってはもう、諦めて『勝つ』ほかない。
「ぼくクダリ。サブウェイマスターをしてる。ダブルバトルが好き。2匹のポケモンのコンビネーションが好き。そして勝利するのが何より大好き。――じゃ、それぞれのポケモンが様々な技を繰り広げるすっごい勝負、始める」
先発は予想通りのイワパレス・アイアント。
よってバンギラスの砂はタイプ上無効、どころかイワパレスの特防は1.5倍と強化。場合によっては相手を助けることになりかねないという砂の欠点が全面に押し出されている対面である。かといって、ノーマルのクダリは地面技に弱い。ガブリアスの『じしん』ごり押しだけで正直どうにかなってしまえる。それも面白くないが…、以前図らずも舐めプレイをした結果兄の方に怒られたことを思い出せば、人事を尽くさねばならないのだよたとえオーバーキルになったとしても。
「典型的な砂パだね」
「じゃあ今からでも棄権していいですか?」
「ダメ。ゼッタイ。」
……いかにもドーピングしてそうな人が言うとは皮肉だな。
同じく岩タイプであるバンギラスも天候砂によって特防が1.5倍になっているが、弱点のシザークロス(虫)やアイアンヘッド(鋼)を食らえば一溜りもない、素直に交代させるのが良いか?
「『シザークロス』!!」
「バンギラス『まもる』、ガブリアスは『じしん』」
まずは様子見、ということで『まもる』を選択。クダリはイワパレスもアイアントも覚える『シザークロス』で一気に畳みかけてきたが、『まもる』をしていたバンギラスには届かず。合間にガブリアスの『じしん』が発動し、アイアントとイワパレスにダメージを与える。勿論『まもる』のターンにあるバンギラスはノーダメージ。
「アイアント『いわなだれ』!イワパレス、ガブリアスに『シザークロス』!」
「戻ってバンギラス。頑張ってねウォッシュロトム。ガブリアス、『じしん』」
アイアントの『いわなだれ』がガブリアスとウォッシュロトムに命中する。しかしガブリアスにひるみの追加効果は起こらなかった。間髪入れずガブリアスの『じしん』が発動する。――イワパレスの『シザークロス』を含め被ダメージはHP半分。クダリの残りはギギギアルとダストダスだから引き続きガブリアスが刺さる。
――…ゲームではガブリアスに『じしん』ぶっぱさせときゃ楽に勝てたけど、そう簡単にいかないか。…でももう一回やればどっちも落ちるな。
ごり押しした所で替わって現れたウォッシュロトムには特性・ふゆうで『じしん』が当たらない。ちなみにダブルバトルでの『じしん』はダメージが3/4と大幅減なためこの攻撃で落ちているはずのアイアントが落ちてないのは想定内である。……9割で落ちるはずだが、引きの悪さには定評がある。
「アイアント『いわなだれ』、イワパレス、ガブリアスに『シザークロス』!」
「ガブリアス『じしん』。ウォッシュロトム、アイアントに『かみなり』」
『いわなだれ』が命中し、更に追加効果『ひるみ』が発動し、ガブリアスの『じしん』が不発に終わる。そしてイワパレスがガブリアスに肉薄し、『シザークロス』が命中する――二度連続して『いわなだれ』が二匹ともに命中して尚且つ『ひるみ』が発動するのは…9パーセント?仮に今回のアイアントが特性・はりきりだったとしたら小数点以下の引きになるのだが……これがサブウェイクオリティってやつか。現実となっても起こるんだね。
ガブリアスが落ちてしまったが、しかしアイアントも落ちた。
「…む。“心ここに非ず”で勝てるだなんて、ダブルバトルを甘く見ないで。ギギギアル出発進行!」
「お願いね、ハッサム。――ウォッシュロトム、イワパレスに『かみなり』」
今度の『かみなり』は外れた。
「……ねぇ、どうしてノーマルに乗ってるの」
甘く見るどころかなりに万全を期したパーティに、さすがのクダリも引いているようだった。
――我ながら種族値の暴力だよこれは。もし見せ合い6on6でこれ見たらその時点で勇気の切断をするかもしれない。
「あのね、キミはそんなバトルで満足できるの?」
「……それは、もう」
勝利が約束されたバトルは、ひどく味気のないものだ。
「しょっぱなからあんなバトルしたってのに、しつこいくらい再戦望むとかクダリさんドMですか。…いやごめんなさい、Sでしたねごめんなさい。やめて、身長差にかこつけて肘乗っけないで。縮みます」
「ノボリからが面白いバトルをしてるって聞かなきゃ、ぼくだって気にしなかっただろうけどね。ねぇ、どうしてダブルトレインに乗らないの」
「ダブルで趣味パってかなりの難易度ですよ…」
補足:ダブルバトル中の主人公は指示出すのでかなりいっぱいいっぱいなので平坦なしゃべり方になってます。
補足2:クダリとのバトルを死にたくなるほど拒否したのはサブウェイマスターに二度も厨パで挑むのが死ぬほど嫌だったのと多少得意に思ってた分野(ダブルバトル)でさえ厨パを使ってまで勝とうとしてしまうのが死ぬほど嫌だったから、です。