Lucid Dream




何故かスモッグまみれで浮かんでいたヤャンデラを回収し、それから少しばかりの休憩を取ったは、翌日午前二時の出勤はよくよく考えてみれば『今日』二度目でなく『明日』一度目だけど深夜アニメは25時とか26時と表記するのだから『今日』としてカウントしても間違いではないのだろうか、などと徒然なるままに考えながら、二度目の巡回に向かうため再びギアステーションへと足を進めていた。これが終われば一日フリーである。次の出勤は明日の2時。もちろん午前の。

日中は人でごった返すライモン中央駅だが、すでに最終電車が発車したこの時間はさすがに人気がない。
よくよく耳をそば立てれば、そこに人がいることが分かるだろう。実際、一日を通してサブウェイ関係者が不在になることはない。たとえばバトル車両の整備はこの時間にされるし、早朝から深夜まで人の絶えない改札付近の掃除が行われるのもこの時間である。
しかし昼間の様子ばかりをよく知るには、おどろおどろしく感じられる。

たとえば、この無機質なコンクリート壁に伸びる影が今にも形を変えたりなんだりして…――そう足元に目をやると、の影と、その影に忍び寄る見慣れぬ怪しげな影……この形、ゲンガーか?そういえば、眩暈がする気もする。そう、熱中症になった時のような…、


「…あの、熱いんですけど」
「ヤャンwww」


それもそのはず、見上げれば、炎を身に纏ったヤャンデラが、その炎の形を見事に変化させゲンガーのような形にさせていた。 見た目はフレアドライブそのものだが、シャンデラはフレアドライブを覚えない。おそらく鬼火とサイコキネシスを使ってそれらしくしているのだろう。なんというPPとスキルの無駄遣い。その才能はいらなかった。

「……」

モンスターボールを掲げ、強制収容する。
残った熱気はその内消えるだろう。立つ鳥跡をなんちゃらのことわざが頭を過ぎる。


「おや、空調が…?さまでございましたか」
「ノボリさん」


ドアの開閉音と共に耳慣れた声がした。目をやると、果たしてノボリさんとシャンデラだった。いつものコートは手に持って、ギアステーションから出てきた。ということは、仕事終わりなのだろう。いくら深夜だといって、人目があるかもしれない場所で身なりを崩すような人でない。

「遅くまで、ご苦労さまです」とやや疲れた様子で頭を下げるノボリさん。そしてシャンデラ――ここにいるということは、見回りのお仕事も終わったらしい――が、会釈代わりに炎を揺らめかす。


「おつかれさまです。夜勤…じゃなかったですよね。まさか、一日ずっと?」
「色々と重なりまして…。正直を申しますと、チョロネコの手も借りたい状況でございます」
「お気持ちは分かりますが、お体をお大事に」
「ありがとうございます。ですがお気遣いなく。明日…いえ、今日からは、私よりずっと優秀な弟が出勤しますから」
「あぁ、そういえば、出張されてたんでしたよね、白ボ…クダリさん」


へー。『私よりずっと優秀』ねぇ。
あっちのクダリさんは、期日ぎりぎりにそつなくこなしていたようだ(あれ?それって『そつなく』ないのか?)けど、特別すばらしいというわけでもなかったような覚えがある。これはお兄ちゃんの謙遜か、それとも、本当に誤差(バタフライ効果の影響)があるのか。このノボリさんが、仕事上でも普通の人って可能性もあるぞ。…なんということだ。ノボリさんが普通だなんて。そんなのノボリさんじゃない。


「…あ、そろそろ、時間が」
「お引止めしてすみません。お勤めご苦労様です」


そう言って頭を下げる、幾分顔色の悪いノボリさん。きっとノボリさんが仕事ができないわけじゃなくて強いていうならアニメスタッフが悪いだけでノボリさんはなんにも悪くないんだろうなぁ思いながらいえいえこちらこそと頭を下げ返す。


「おやすみなさい、ノボリさん」
「はい。おやすみなさいませ」


2012.12.01. up.

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