Lucid Dream




ただ今回復待ちである。
さすがにテンテンテロテン♪では回復できないので、それを逆手にとって、待っている間はサブウェイマスターと話ができる、のもサブウェイスタンプラリーの特典の一つだという。


「では、何かしらのポケモンの技に巻き込まれたことで、この世界に飛ばされたのではないかとお考えなのですね」
「でも…世界を越えるなんて、『ときのほうこう』と『あくうせつだん』がくっつきでもしない限り無理だと思うんです」


こういう展開では、いつも通りに元の世界に戻ろうとしてあれ!?能力が発動しない!!となるのが定石である。
『サブウェイマスターに勝利する』という条件をクリアしているにも関わらず一向に兆しが無いあたり、自分もその流れに乗ってしまっているとみていいだろう。

RPGならとにかく住人に話を聞いてまわるしかない。と、ゲームの経験則で分かっている。
というか、そういうこと(設定)にしておいた方がいい。自分の力だけで解決しようとすると、知らない間に謎解きやホラールートに突入するフラグが立つかもしれない。

『バトル中、ポケモンの技に巻き込まれ、気付けばこの世界に飛ばされていた。そんな時にバトルに詳しい人がいると噂で聞きつけ、スタンプラリーに参加し、その人…サブウェイマスターに元の世界に戻る鍵を聞こうとした――…ということにしておいてください。その方が気分が盛り上がります』と言った時には、管制室から二度目のツッコミが入り、ノボリさんの耳が痛んだ。――中々にノリのいい人たちなのかもしれない。


「伝説や幻ポケモンの選出は、当サブウェイでは禁じられておりますが…」
「それはあちらのサブウェイでも同じでした。でも直前まで自分がバトルサブウェイ内にいたのは確かです。――やっぱり、この設定(論理)は今一つですねぇ…」


しかしディアルガの代表技・『時』の咆哮にパルキアの代表技・亜『空』切断。伝説レベルのそれらがぶつかり、そして一つになったなら、世界から人ひとり簡単に飛ばしてしまうような威力になるだろう。

は可能性の一つとして話しているだけであって、実際巻き込まれたとは考えてない。

彼?らは確かにのボックスに入っており、DPtからBWに送って以来一度も引き出したことはない。と同じようにトリップした人間や、『ゲーム主人公』でもないかぎり、この世界のトレーナーがディアルガやパルキアを出してくるはずがないのだ。

ちなみに、亜空切断ということばは、非公式であるが、別の意味を持つ。Wi-Fi対戦では、バトル途中に切断されることがままある。それを亜空切断と称し――…あれ、うわ、これが原因だとしたら…。
つまり、間接的とはいえ、Wi-Fiトレインで切断厨(敗戦数を増やさないために意図的に亜空切断を行う者)相手にバトルしたことが要因となって、特殊トリップとなった、とは考えられないだろうか。

だ、だとしても、ディアパルと心合わせることが脱出条件、とかそういうの無いよな?トウヤくんやNでもない限り、伝説と心合わせるとか無理だから。局が違うけど名前で律するとかも無理だから。私が知ってる神様の名前はにぎはやみこはくぬしとあまてらすおおみかみぐらいだから。
あ、それかキャプチャすればいいのか?…でもタッチペンでさえダークライをキャプチャできなかった私が今からリアルにレンジャーに弟子入りするとして、ディアパルをキャプチャするまでに何年掛かると思う?――はい却下。山田くん次の案もってきてー。

……待てよ?私じゃ無理なら、他に任せればいいじゃん。
私が出来なくても、主人公には出来るんじゃ。

主人公……


「サートシくんか!!」
「!!?」
「ノボリさん!サトシって名前の、マサラタウンから来たトレーナーに会ったことありますか?ピカチュウをつれた10歳くらいの男の子です」
「い、いえ。ピカチュウをつれた方が乗車されれば話題になっているでしょうが、今までにはございません」
「しゃあっ!」
「痛っ!…え、あ、あの」


拳を握り、宙にスカイアッパーをかます。光が見えた。やった、これで帰れる。
思えばサブウェイスタンプラリーなんて特殊イベント、アニメ放映のために用意されたに決まってる。だったらこのスタンプラリーが終わる前、いや、直前くらいにサートシくん御一行が現れるはずだ。

だったら、それまでの衣食住を確保しないと。思い立ったら吉日だ。服は一先ずいいとして、住む場所を探さないと。
ポケセンを利用するにも持っているトレーナーカードが違法扱いされるだろうから、アパートを借りないといけない。
ライモンの相場はそもそも高いが、毎日バトルサブウェイに通うのだから、多少割高になってでもサブウェイの近場を選ばないと。滞在期間によってはホテルの方が良いだろうか。


「ノボリさん!サブウェイスタンプラリーの開催期間って、いつまでですか?」


まさか今日で終わりということはないだろうけど…って、なんで顎押さえてんの?割れたの?急にイッシュ仕様になっちゃったの?


「の…残り一週間でございますが」
「セフセフ⊂(^ω^)⊃ じゃあ借りないとですね」


タイミング良く、回復が完了したことを示すテンテンテロテン♪が流れる。

扉近くに設置された回復装置から、モンスターボールを取り外す。覗き込む。
覗き込んで見えたヤャンデラは何故か不器用なドヤ顔を披露した。正直ビジュアル面ではシャンデラ姐さんに完敗である。しかしバトルでは勝ったわけだからこの勝負、引き分けということで。

先立つものは金でございます。
さぁ、(敷金礼金食費という名の軍資金狙いに)ひと狩りいきますぞwww

ライモンにはリトルコートをはじめ、稼ぎ場所が多くある。ヤャンデラのレベルも高い。楽に稼げるんじゃないかと思うのですな。
意気揚々と扉に向かうが、しかし、


「お待ちくださいまし」


同じく回復の終わったノボリさんが、コートの裏にモンスターボールを装着しながら私を引き留めた。

伏し目気味だったノボリさんは、私の視線を受けると、背筋を伸ばして「ライモンに滞在されるようでございますが、」と続けた。――お前に貸すアパートはねぇ!!とかおめぇの部屋ねぇから!!とか言わないでよ?ってこのネタもう古いね。


「シャンデラ一匹というのは、無謀ではございませんか?」
「ヘルガーやサザンドラが出てきたらマッハで逃げます」
「御冗談を。トレーナーとの戦いは『ダメだ!勝負の最中に相手に背中は見せられない!』ものでございます。それからトレーナーカード不所持のトレーナーが野良バトルを行った場合、最低5000円の違反金が発生します」
「だったらどうしろってんですか」


この世界の私がヤャンデラ一匹しか持っていないとは思わないが、しかし勝手にバトルさせるのはどうかと思う。努力値振る途中だったら目も当てられないし、そんなことできない。もし私が配分中のポケモン勝手にバトルに出されたら助走つけて殴るだろう。――あ?ヤャンデラ使っただろって?今更だっての。


「ただいま、当サブウェイはアルバイト急募中でございまして」



2012.08.20. up.

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