Lucid Dream




パソコン、に、あれはポイント引き換えコーナーか?
いつもタウリンとリゾチウムとインドメタシンばっか買ってすまんね。フルアタパーティですまんね。
でもアールナインで9800円なのにここだと1BPなんだもん。サブウェイ通ってたらBP貯まってしょうがないしね。

それから…、


「うっわ…生駅員!!」


緑色の制服の青年の姿が遠目に見え、全俺が泣いた。
ついでに電車にも緑色のラインが入っている。緑って何トレインだっけ?見覚えあるような無いようなって感じだよ?

もっとよく見たくて、ホームへと足を進める。…これ、現実世界でも見たような気がしないでもない。
すると、線路に近付きすぎたのか、駅員に呼び止められた。生駅員と初会話。心の汗で前が見えない。


「あれ、誰かと思ったらさんじゃないですか!お久しぶりですね」
「(お久し…?)」
「最近はスーパーばかりだったのに、気分転換ですか?」


ってことは、ここはシングルの路線か。しかもノーマルらしい。
でもまぁ戻るのもめんどうだから、ここにしよう。

しかし、最後にノーマルに乗ったのっていつだろう。サブマス倒してから一度も無いか?
いや、うっかりバトルビデオ消してからも行ったか。あ、でもあれマルチか。…そうそう双子ボコるとこが撮りたかったんだよな。ボコられたがな!!


「え、と…」
「…あ、すみません!俺、仕事中だってのにっ。またボスに怒られるかな…。――こほん。改めまして…」


ちょ、そこkwsk。
ボスって誰ですか。もしかして黒い人のことですか。ボスって呼ばれてんの?なにそれおいしい。


「バトルサブウェイにようこそ!こちらではシングルトレインの乗車をご案内しております。シングルトレインに乗車しますか?」


生セリフいただきましたー!はい、よろこんでー!!

……あ、ここでもコマンド出ないんだな。
Aボタン連打してあまり読んではいなかったが、たしかここでは>乗車する 説明を聞く やめる の選択肢が出たはずだ。しかし脳内にも自分から見て右上あたりにも、それらしいものは浮かんでこない。

吹きだしを探してきょろきょろと上空を見ていると、駅員がきょとんと首を傾げた。


「どうしました?」
「あ、いや…、…乗車します」
「それでは参加するポケモンを選んでください」
「……」


…あれ、わたし今何持ってたっけ。
寝たときは確かウルガモス・たまご・たまご・たまご・たまご・たまごだったはずだけど、いやでもさっき咄嗟に取ったらロトムだったしな。

腰についているモンスターボールを取る。
その数は6であり、全部を手に乗せると溢れそうになったが、なんとか乗せて覗き込む。


「……オウフwww」
「!?」


いっけね、変な声が出た。

左から順にガブリアス・ウォッシュロトム・ドータクン・ゴウカザル・ゲンガー・シビルドン。
いわゆる厨パのオンパレードである。我ながらこれはひどい。

しかし昨日厳選した臆病トゲキッスどこ行った。天の恵みエアスラッシュでひるみ三タテにするはずのトゲキッスどこ行った。そこ、厨ポケっていうな><


「決まりました?」
「え、あぁ、じゃあ…」


早ぇよ駅員。確かにいつも思考停止Aボタン連打だったけどこれは早いよ。
しかしここは人を待たせられない小心者、適当に選んで渡してしまう。

…あ、人生初ポケモンチョイスが適当に終わった!!――自分の馬鹿さ加減に泣けてきた。


「はい。それではシングルトレインへご乗車ください!」


リセットボタン誰か押して!









「行け、リグレー!」


出会い頭になんか偉そうなことを叫んだおぼっちゃま(仮)がモンスターボールを投げる。
…え、特に聞いてないから何言ってるか忘れたよ。っていうかそれどころじゃないから、今それどころじゃないから!

これ、ボールって投げるだけでいいの!?
ボタン押さないと転がってハハッ…ワロスってならない!?


「……キミ、早く投げないか。ぼくのポケモンを見てから選ぶなんて、反則行為に当たるんじゃないか?」
「そんなん言われても知らんがなっ、……じゃああなたが選んでください!」


両手に3つとも持っておぼっちゃま(仮)に掲げる。
見せるったって車両の反対側にいる彼には中身まで見えないだろうが、どれになるかはランダムなんだから条件はこれでイーブンなはずだ。


「僕が選ぶのかい!?」
「早く!!」


自分でもよく分からないテンションで逆ギレすると、「じゃあ、右で」と言われる。
多分これのことだろう、彼から見て右のボールを投げる。出てこなかったらそれまでだ。

……しまった、中身確認してない。
しかしボールは床にぶつかる瞬間にボンッ、と音がして、煙が溢れた。成功だ。どうやら投げるだけで良かったらしい。


「ゲン…ガー!」


そこに立っていたのは。紫色のころんとしたポケモン、ゲンガーだった。
おぼっちゃまとリグレーを挑発するように、べろべろべろーっと舌を出す。

…やだっ、生ゲンガーちゃんかわゆすっ!!衝撃と感動で涙腺が緩みまくる。
パーティの中でも一番付き合いが長いのがこのゲンガーだ。なんせ初代からだよ。シオンタウンで出会ったんだよ。


「リグレー、サイコキネシス!」
「ちょ、いきなりタイプ一致弱点攻撃とかまじ勘弁っ」


さすがのゲンガーちゃんも確定1で落ちる。

ちなみに乱数1になるのはリグレーが性格不一致で特攻個体値が3以下だった場合だ、まず無い。
…いや、マイナス補正だったら30以下か。だけどサブウェイにいるような人間がそのようなポケモンを使うとは思えないから無視無視。


「……っ、何だと!?どうして落ちないんだ!ゲンガーだったら確1だったはずだ!!」
「しかーし残念、タスキ持ちだったんですねぇー!ゲンガー、シャドーボール!!」


ゲンガーの手に某忍者漫画の主人公が使う螺旋丸ばりに渦を巻いた謎の黒いボールが生まれ、それが一直線にリグレーへと飛んでいく。
過たずシャドーボールはリグレーに直撃し、昏倒する。…タイプ一致弱点狙いはこっちも一緒だっての。


「タスキ…?きあいのタスキか!クソッ…行け、シママ!」
「もっかいシャドーボール!」


さっきは動揺して先手を譲ってしまったが、このゲンガーはおくびょう特攻・素早さ振りの最速仕様だ。
少なくとも未進化ポケモンに遅れを取るような子ではない。ついでにシママの覚える先制攻撃技・でんこうせっかは無効なのであしからず。

きあいのタスキはHPが満タンな時に攻撃を受けてもHPが1だけ残るというバトル廃人御用達アイテムである。
その中でもゲンガーはある理由からきあいのタスキが採用されることが多く、実際のバトルでも大体バレるものだが、知らないならしょうがない。ざまぁwww


「…ッ、行け、ゾロア!」


三匹目はゾロアか。特性はイリュージョンで手持ちの一番後ろのポケモンに化けて出てくる、というものであるが、三匹目だから意味がない。何故二匹目で出さなかったのか非常に疑問ではあるが、ゾロアはタマゴ技でふいうちを覚える。されたら確実にゲンガーは落ちる。

ただしふいうちの成功には条件がある。


「ふい…」
「戻って、ゲンガー!」
「何っ!?」


そう、相手の出すのが攻撃技である、という条件だ。
だから換えれば、このように技は失敗する。

実際はレベル5でおいうちを覚えるため、おいうちを打たれたらそれまでだったのだが、それはそれとして。


「行けっ、…ええっと、」


また確認もせずに投げちゃったよおい。

ボールから出てきたのはシビルドン。
通称技のデパート。どこから出すのか分からないが色々なタイプの技を覚える、かなり器用なポケモンである。
特性ふゆうによって実質弱点が無いという優秀さであるが、実際は耐久と火力(攻撃・特攻種族値)が中途半端であるためにそこまで使われてはいないようである。わたしは好きだが。


「ゾロア、ナイトバースト!」


あと遅いんだよね、シビルドン。大抵のメジャーポケモンには遅れを取る。
しかしふはは!この程度の攻撃、毛ほども感じんわ!……実際には3割ぐらい削れてるってところだろうが。
しかも4割で命中率が下がるというこのゾロア・ゾロアークの専用技だが、ゲームと違って命中率が下がったかどうかがいまいち分からない。


「…まぁいいや。シビルドン、10まんボルト!」


シビルドンの体から発射された電撃が、過たずゾロアに襲い掛かった。
ゾロアは避けるしぐさをみせたが、しかしもともとの命中率が100パーセントと高精度であるからか、果たして命中率は下がっていなかったのか、結局ゾロアに命中した。


「きゃんっ!」


吹っ飛ばされたゾロアはそのままおぼっちゃんにぶつかり、おぼっちゃんの腕の中に。


「あぁ、ゾロア!…ぼくの負けだ、完敗だな。ありがとう」
「ありがとうございました」


ゲーム通り「センキュウ、おぼっちゃんでした!」と言うかと思ったが、しかしそうではなかった。
ボールにゾロアを戻した彼は、に近付くと手を伸ばした。

無意識に汗ばんでいた手を服で拭って(ハンカチなんて都合の良いものは見付からなかった)、握手する。


「それにしても、キミのポケモンはこのトレインには勿体無いんじゃないかい?」
「普段はスーパーで使っているんで」
「あぁ、通りで!それにしても、キミ、バトルの前と性格が違いすぎやしないか」
「……!」


…うわ、うわうわうわっ!!
初バトルで興奮のあまり高テンションでしゃべっていたけど、誰だよ多重人格かよってレベルじゃなかった!?
からをやぶるどころじゃないよ。防御特防下げて攻撃特攻素早さ上げてどうすんのって!!


「…う、わ、ごめんなさいぃぃ!」


ものすごく恥ずかしくなって、おぼっちゃまの脇をすり抜けて次の車両に飛び込む。
もうやだ死にたい。

2012.03.22. up.

NEXT TOP

Image by web*citron  Designed by 天奇屋