Lucid Dream




赤、青、緑、黄、茶、紺。
多種多様な人種と毛色の集まるこのバトルサブウェイで、一際人目を引く男がいた。

金色の髪に、青色の瞳。
イッシュでは一般的なカラーリングだが、しかしどこかカントー系が混じった顔立ちと強者としての自信が、人混みの中にいてさえその男の存在を目立たせている。

その男の名は、












この世界の生活にも、ずいぶん慣れたもんだと思う。
もっぱら“バトル”サブウェイに通ってはいるが、諸事情でそらをとぶを使えないの移動手段はもっぱら鉄道であり、今ではサブウェイの方もそれなりに把握している。

今、はソウリュウシティ発ライモンシティ行きのトレインの中にいる。電車の中から晴れ渡る空が見えることに違和感を覚える自分に凹みつつも、一定の収穫が得られたことで気分がいい。

今日の目的はロリコンほいほいことアイリスちゃん…じゃなくてバトルの館だった。
バトルサブウェイでは体験できないローテーションバトルとトリプルバトルを、実際にやってみたかったのだ。

半日ぶっつづけで楽しんでいるとエリートトレーナーから「もう…勘弁してください」と言われたために、今こうしてライモンへの帰路についているが、言われなかったら一日遊ぶつもりだったことは言うまでもない。


「まもなく、終点、ライモンシティに到着します。右側のドアが開きます。ヒウンシティにお乗換えのお客さまは3番ゲート、カノコタウンにお乗換えのお客様は6番ゲートへ――」


アナウンスを聞いて、立ち上がる。
まばらにいた乗客もまたと同じように立ち上がり、扉の方へと近づいた。

これがライモン−ヒウン間の路線だと、特に朝と夕方にものすごい混雑ぶりを見せるが、ソウリュウシティ発の電車は一日を通してあまり混んでいない。人混みの発生する場所で起こりがちなスリも、この路線ではそうそう心配する必要がなく、都会出身でないでも安心して利用できる。

さぁ、今日はやること無くなったし、シングル周回してインドメタシンをカンストすっかな。それともローテーションバトルを応用して、ダブルでローテーションしてみるかな。 ――いつも通りの廃人回路でそう思いながらサブウェイからバトルサブウェイへと駅構内を歩いていると、ふと、呼び止める声が聞こえた。

…あぁ、この場所で声を掛けられるってことは、他地方から来た人かな。9番ゲートの路線はフキヨセ方向だから、空港利用者が多いんだよね。

って、そうじゃない。そうじゃないよ自分。周りを窺って声の主を探す。


「あの、」
「はい、なんです…ぁあああああ!?」


声の主はすぐ後ろまで迫っていた。

…ちょ、この人あれっしょ、あれだよ、電撃ニーt…違う、プラチナの、ナギサシティの、デンジさんだよ。
初出はダイパだけど主にバトルフロンティア的な意味でプラチナの方が思い入れが強いから私的にはプラチナのナギサシティのデンジさんだよ。


「…もしかして、オレのこと知ってる?」


あんまりまじまじと顔を見つめてしまったからか、それとも出会い頭の絶叫でか、デンジさんは察したらしい。


「え、ええと、ナギサの、ジムリーダーの?たしかきゃぎゃやきしびれさすスター…すみません、かみまひた」
「あぁ、オレはデンジ。“かがやき”しびれさすスター、な。――へぇ、こっちでオレを知ってる人間に会うとは思わなかった。シンオウの出身なのか?」
「カントーとジョウトの間にある、無名の街出身です」


こっちで会う人にはいつもカントー出身と誤魔化す。
が、本場の人間に適当に話を合わせてもいつかバレるだろうから、誤魔化しなしで言う。


「イッシュに移って長いのか?」
「そうでもないですね。でも、サブウェイくらいなら案内できます」


自分で言って思い出したけれど、この人道聞こうとしてたんじゃなかったか。
デンジさんも言われて思い出したらしく、そういえばそうだったな、などと呟いている。忘れんなよ。


「それで、どこに行きたいんですか?」
「バトルサブウェイ」
「ブフォ!」


はい神展開入りましたー!!
……えっ、えっ、四天王挑戦だけじゃなかったの?


「分からなかったらごめん、誰かに聞くから」
「分かります。とっても分かります。むしろ私以上に分かる人間はいないんじゃないかって勢いで…、」


というか、すでにバトルサブウェイの方角に向かって歩いていたっていうね。無意識って恐ろしい。


「偶然私も行くところでした。良かったら、一緒に行きます?」
「そうだったのか。じゃあ頼む」






「バトルサブウェイには、よく行くのか?」
「えっ(言えない…毎日だなんて言えない…)、そうですね、ポケモンのコンディションを見たかったり、思いついた戦略を実際に動かしてみたかったりする時は乗りますね」


嘘は言ってない。全然嘘は言ってない。
「あ、ここ下りますんで」、階段を下りる。


「あっちの雑誌だと、バトルサブウェイのことはあまり載っていなかったんだ。電車に乗ってバトルすることは分かったんだが…。知ってることを教えてくれないか?」
「そうですね…。まずは、ノーマルの、シングル、ダブル、マルチトレインに乗車することになります。そこで21連勝して終点にたどり着くと、それぞれのスーパートレインに乗る資格が与えられます」


ゲーム上、シンオウには街を走る電車は無かったけれど、実際のところはどうなんだろうか。
ここだってゲームの上ではバトルトレイン以外はカナワタウン行きしかなかったけれど、実際はこうしてサブウェイもあるし、シンオウにも多分あるんだろう。北海道か…炭鉱トロッコ列車とか乗ってみたい。市民用じゃないけど。


「シングル、ダブルバトルは1on1、マルチバトルは2on2だったか?」
「トレーナーの数はそうです。ただシングルは3vs3、ダブルは4vs4、マルチは1トレーナーが2匹ずつ出し合う4vs4になります。あぁそうそう、シンオウでいうバトルフロンティアのバトルタワーと同じルールです」
「おい、その年齢(とし)でシンオウのバトルフロンティアに挑戦したこともあるのか?」


あ、やっべ…、分かりやすい例をと思って出したけど、そう突っ込まれても仕方がないか。
シンオウどころかホウエンもジョウトもコンプ済みだとか言わない。ますます色々とおかしいことになるし。


「聞かなかったことにしてください(・ω<)――それで、ノーマルトレインだと21戦目、スーパートレインだと49戦目にサブウェイマスターと呼ばれる人が待ち構えてます」
「サブウェイマスター?」
「格好と雰囲気が一般人とはまるで違うので、対面すればすぐに分かると思います。あとはお楽しみってことで」


黒いピエロと白いピエロがシンメトリーってますよ、くらいは言ってもいいかもしれないけれど、でないと初対面でびっくりするかもしれないけれど、まぁそれもバトルサブウェイの魅力の一つだろう。

「こちらです」と先陣を切って、階段に足を掛ける。そうして上りきると、今日もコンセプトが理解できない某モニュメントが見えた。…そういえばナギサにもよく分からない形の岩があったよね。


「ここがバトルサブウェイです。廃人共がうごうご蠢いていますが、それでも自分のバトルを貫けば、デンジさんならサブウェイマスターに会えますよ」
「ここまでありがとな。さっそく挑戦してみる。まずはシングルからだな。…ええと、キミの名前は、」
です。――トレイン内でお会いしたらお手柔らかに。そうでなければまたお話しましょう。私はよくあそこの喫茶店にいるので、見かけたら声掛けてください」


そうして手を振って、デンジさんがシングルトレインのホームに向かうのを見届けると、私はダブルトレインへと向かった。


あー…目が疲れた。さすがきゃ…かがやきしびれさすスターだわ。

2012.03.31. up.

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