マルチバトル。
サブウェイマスターのことばを借りるなら、お互いの弱点をカバーし合うのか、はたまた圧倒的な攻撃力を見せるのか、どのように戦うのかはそれぞれだが、とにかくパートナーとの息がぴたりと合わない限り勝利するのは難しい。
そういう私も、ゲームでノーマルマルチを攻略してからは、スーパーマルチにもノーマルマルチにも挑戦していない。
だけど。
「さん、オレとマルチ組みましょう!オレ、さんとだったら、今度こそ行ける気がするんです」
「うーん…そりゃ、確かに行けるだろうけど…。でもチャンピオンと組むなんて私恐れ多いよ、“トウヤくん”」
そういや結局誰が世界を救ったんだろう、もしくはこれから救うんだろう。わたし動く気ないし。そう思って調べてみたら、あれよあれよとまたたく間に彼の名前が出てきた。やだ、インターネットって怖い。
あんまり簡単に出てくるもんだから、ちょっと自分の名前も調べてみようかとも思ったけれど、出てきたら出てきたでどうせ廃人乙とでも罵倒されているだろうから止める。
どうやら、この世界は、トウヤくんが舞台の世界だったらしい。
だったら私はトウコちゃんポジションなのね。そういや、ゲームでは選ばれなかった方の主人公はバトルサブウェイで廃人やってたし、今の自分の生活は順当かもしれない。
トウヤくんはちゃんとジムバッチを8つ集めて、プラズマ団と戦って、英雄に選ばれて、Nを改心させて、ゲーチスを倒して、その後にもう一度四天王とアデクさんに挑戦して、正式にチャンピオンになったそうだ。
でも人の上に建つ器じゃないからってチャンピオンは辞退したらしくて、今もチャンピオンはアデクさん。
その間私は何をしてたって?バトルサブウェイで廃人やってましたけど何か。
それで、更なる高みを目指し始めたトウヤくんは、バトルサブウェイに挑戦し始めたそうで。
前にスーパーダブルに強い挑戦者が、って話を駅員さんから聞いたけれど、あれトウヤくんだったそうだ。
そういうわけで、怒涛の勢いでスーパーシングルとスーパーダブルを攻略したトウヤくんは、今更ながらマルチに挑戦することにしたらしい。
だがここで問題が発生する。なんてことない、マルチに挑戦しようとも相手がいないのである。
トウヤくんの顔と名前は知る人は知ってるし、負けたら確実に自分の実力が足を引っ張ってるって分かるから、普通に嫌だろう。私も嫌だ。あと、極たまに組んでくれる人がいても、うっかり味方を巻き込んで攻撃してしまったりして、速攻でパートナーを解消させられるそうで。そりゃ私も嫌だ。
だから嫌だって。ねぇ。日本人だからはっきり言えないけど、それとなく婉曲に言ってるじゃん。嫌だって。
「でも、さんだってチャンピオンになったんでしょう?オレと同じじゃないですか」
あとびっくりしたのがこれだ。実は私チャンピオンだったらしいよ。
確かにバッチケースにバッチは8つあったけど、チャンピオンになるところまでゲーム通りだと思わなかった。
殿堂入りしていたらならそうパソコンに表示されるはずなのに、トウヤくんが言うには、どうやら私は登録そのものを辞退していたらしい。道理で誰も知らないはずだよ。
「あー…でも、今はもうパーティも全然違うし、(覚えてないけど)過去の話だから」
「ノーマルマルチだけでいいんです。お願いします」
……くっそう。
この世界の主人公に頭下げられて、断れるわけないじゃん。
「ノーマルでよければ。だけど、一つだけ条件がある」
「何ですか?」
「私がチャンピオンだったって、誰にも言わないで」
「分かりました。でも、どうしてですか?」
「登録自体を辞退したのは…うわ、これダジャレ?…じゃない、登録そのものを辞退したのは、それなりに理由があるってこと、かな」
覚えてないけどね。“わたし”じゃない“わたし”のやることなんて、今更分かるわけないし。
でも騒がれるのは嫌だ。それに一時でもチャンピオンになった人間がノーマルトレインでせこせこBP稼ぎって何か嫌じゃない?
「…そうですか。すみません。オレも辞退したってのに、深入りして」
「ううん、気にしてないよ。じゃあ、さっそくだけどトウヤくんの持ちポケ見せて。私は合わせるから」
さっさと21連勝して、さっさとタッグを解散しよう。
多分トウヤくん一人でも勝てるだろうけど。
「オレのメンバーは、これとこれです」
「おぉ…なるほど」
ツンベアーとローブシンか。中々のアレだ。アレったらアレ。
「どうですか?」
「どう見てもトリパです本当にありがとうございました」
「ですよね…。シングルとダブルで使ってないポケモンを、って思ったら、偶然こうなっちゃって」
「そっか。でもさすが、よく鍛えられてるね。技は?」
図鑑ごと見せてもらう。
…うん、普通にレベル100ってとこが凄いね。私ったらイッシュを一周したら即ボックスに放置したから精々レベル60ちょいにしかならなかった。あ、またつまらぬダジャレを思いついてしまった。今日はダジャレの日かもしれない。
ええと、努力値配分と技は……。
…オウフwwwいわゆるトリパなテンプレキタコレですねwww
おっとっとwww拙者『キタコレ』などとついネット用語がwww
まあ拙者の場合ポケモン好きとは言っても、いわゆるキャラクターとしてのポケモンでなく、役割理論として見ているちょっと変わり者ですのでwww
対戦動画アップユーザーの影響がですねwwww
ドプフォwwwついマニアックな知識が出てしまいましたwwwいや失敬失敬www
まあ萌えのメタファーとしてのクマシュンは純粋によく出来ているなと賞賛できますがwww
私みたいに一歩引いた見方をするとですねwww
ポストリングマのメタファーと商業主義のキッチュさを引き継いだキャラとしてのですねwww
ツンベアーの攻撃性はですねwwww
フォカヌポウwww拙者これではまるで廃人みたいwww
拙者は廃人ではござらんのでwwwコポォ
「トリパで行きましょう(キリッ」
「でも、サブウェイマスター相手だと、すぐに見破られないですか?」
「見破られようが、相手はツンベアー以上に早いポケモンばかり。それにちょうはつもアンコールも覚えてない。一度トリックルームが成功すればあとは殴って殴って殴るだけの簡単なお仕事です」
「廃人ですね」
「よく言われます。じゃあ、わたしはサマヨールとシャンデラで」
「輝石ですか」
「輝石です」
進化の輝石も持たせずに、何故サマヨールかと。