「ちわーす。デンジさんいますかー?ニャルマー宅急便ですー!」
五日目の朝のことだった。
某着ぐるみトレーナーのお母さまにいただいた急須を早速使い、食後の一服(お茶)をしていた時、インターホンが鳴った。
「あ、デンジさん。お客さんみたいですよ」
「ん」
のそりと面倒くさそうに立ち上がるデンジさんに、「待たせちゃ駄目ですって」と急かす。
追い討ちを掛けるように、「宅急便でーす!デンジさーん!いますよねー!?」と元気すぎる声が入り口の方から響いてきた。
「ほら!」
「…たく、どいつもこいつも朝から元気だな」
背中を押して押して、向かわせる。
デンジがちゃんと歩いていったのを確認してから、は洗い物をしようとタライに水を貯めはじめた。
「おはようございます、ニャルマー宅急便です。こちらに判子をお願いします」
「宅急便…?何か頼んでたっけな…」
二人の声が聞こえる。あ、中に入れたんだ。
「――はい、ありがとうございます。あ、ジムってその扉の奥でしたよね?」
「は?まぁ、そうだけど」
「おーい、良いぞー!!始めてくれー!!」
何を!?
耳を疑うセリフに、思わず台所を飛び出す。
通路を走って、デンジさんの対応する出入り口へ、
「あ、もう一人いらっしゃったんですね。ここは少々危なくなるので、しばらく外に避難していただけますか?」
「ど、どちら様ですか?」
そこには、屈強な男達が続々と登場していた。2、4、6人、…まだ増える。総員、ヘルメット着用。
「デボンコーポレーションから派遣されて来ました、カイリキ建設です!!本日はよろしくお願いします!!」
ひとまず食器類と壊れては困るものを避難させてから、とデンジは喫茶店へ赴いた。
デンジの手には宛名表。そこには、差出人の欄に、と同じ苗字の名前が書かれている。
「………」
「………」
沈痛な面持ちで、カウンター席に座る。
そんな二人をマスターが不思議な目で眺め、声をかけた。
「二人ともどうしたんだ?それと、ブレンドでいいか?」
「……あぁ」
「……お願いします」
カップが置かれて、まずデンジが動いた。
「……聞いていいよな?デボンコーポレーションって、ホウエンの大会社だろ。どうしてこんなところまで、」
「…はい。たぶん、私の兄だと思います。昨日電話があって…――」
「――…そんなわけで、今はナギサのジムリーダーさんの所にお世話になってるんだ」
『ふうん。それはオレも兄として挨拶に行くべきかな。でも凄いな、このオレだってそこまでステージを壊したことはないよ』
「私だって壊すなんて思ってなかったよ…。でも、そのステージがなかなか届かないらしくて、工事が進まないみたいなの」
『工事が終わるまで、はその街にいるつもりなんだろ?…分かった、ちょっと詳しい人に聞いてみる』
「それで、巡り巡ってデボンから宅急便でステージが送られてきたのではないかと…。カイリキ建設も、おそらくデボンの方から派遣されたと」
「ちょっと待て全く分からない。まずキミのお兄さん何者?」
「あれ、言ってませんでした?私の兄、ホウエンのチャンピオンだったんですよ」
「は?」
「辞退したんで一日だけでしたけど。そのご縁でデボンの社長さんとも仲良くさせていただいてるそうです。…ほら、サイユウリーグ前チャンピオンって、デボンの御曹司じゃないですか」
「それで巡り巡ってオレのジムのバトルステージを?まぁデボンはバトルステージも作ってるけど…な…」
べた、とデンジさんがカウンターに伏せる。
「電気タイプのジムって言ったらお兄ちゃん興味持ってましたし、多分、地震にうんと強いステージだと思いますよ。ほら、ホウエンって地震多いじゃないですか。そういうの研究してるって以前兄から聞いていて、」
「そりゃあありがてぇー…なー……」
「ちょっとデンジさん、キャラ変わってますよ?」
「しかたないだろすごく疲れたんだ。…ま、いいや、今度そのお兄ちゃん連れてきてくれ。お礼しなきゃいけないし。それに強いんだろ?」
「ええ、すっごく。バトルは喜んで受けると思いますよ。ただしお兄ちゃんの主力はラグラージですのであしからず」
「…オクタンのタネマシンガン……」
「タイプ一致じしん確2ぷまいです」
「……」
「……」
「…………相性に負ける最強のジムリーダーがいると思うか?」
2011.08.22. 改
「相性に負ける最強のジムリーダーがいると思うか?」(キリッ