では、次はさんの強さの秘訣をお伺いします。
やはりジムリーダーであるお父さんや、マスターであるお兄さんの影響があるのでしょうか?仲の良いご家族だとお聞きしていますが。
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父はジム業や鍛錬で家を空けることが多かったので会うのは朝と夜だけでしたが、兄には物心つく前から遊んでもらっていました。
歳の離れた兄妹ですが、走り回る兄の後をいつも懸命にひっついて育ちました。
足のつかない池を潜って観察したり、木に登って鳥ポケモンの巣におじゃまさせてもらったり。
…そうそう、野生ポケモンの多く生息する森の真ん中で放置されて、どっぷり日が暮れた頃に救出されたこともありました。
その時森の奥からアブソルが現れて、私を護ってくれたんです。
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す、凄いですねー。
積極性とサバイバル能力はお兄さんによって鍛えられたと。
もしかして、そのアブソルというのは先月さんとベストパートナー賞に選ばれた?
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そうです。運命的でしょう?
といっても、古参メンバーは大体そんな出会いしてますね(笑)
ホウエンに移ってからは見かねた隣のおねえさんが代わりに遊んでくれたりもしましたけど、彼女自身フィールドワークで名を馳せた父に育てられたそうで、実質それほど変わるものでもなくて。
……今から思えば、あまり一般的な幼少期じゃないですよね…。
昔はこれが普通だと思ってたんですけど…。
ええ、本当に。
――…、雑誌のインタビューにて半生を語る。
こんな風に並んで歩くの、初めてかも。
はなんとなくくすぐったい気持ちになりながら、ちらりと兄の顔を窺った。
そんな妹の気持ちにユウキはまるで気づかないようで、こちらで出会ったトレーナー達との野良バトルを雄弁に語る。
……いくら私達だって、他に話のネタが無いわけじゃないのだ。
最後にお父さんに会ったのいつ?とか、私お正月まで帰らないつもりだからよろしくね、とか。
お互いにもう子どもじゃないのだからそういう話をしたって良いのだが、兄の顔を見ていると、そんな気は起こらなかった。
それから。
兄の話に相槌を打ちながらは数歩後ろを歩くダイゴを何度も振り返るが、「僕はここが良いから」とにこやかに微笑まれるものだから、それ以上は言わなかった。これだからイケメンはずるい。
街灯がともり始めたソーラーパネルの上を歩けば、馴染みの場所にたどり着く。
腕を組んでジムの扉にもたれ掛かっている彼の姿を遠目に見て、は思わず兄の後ろに隠れ、彼の腕を掴んだ。
ま、まだあちらからは私たちの姿は見えないはずだ。
「聞き忘れたんだろ?ちゃんと聞いてこいよ」
「……お兄ちゃん、」
もしかして、気づいているのだろうか。
私がどうして海岸にいたのか。あのとき呟いた言葉の意味も。
変わらずずんずんと歩き続ける兄の腕を、強く引いて立ち止まらせる。
今度はなに、とばかりに無言で振り返るユウキに、は思わず泣きそうになりながら言い募った。
「でっ、でもまだどう言うか考えてな、」
「ごちゃごちゃ考えるな。が思うことを、そのまま伝えればいいんだよ」
あっさり返して、再び歩き出す。
ちょっ、力強い!! 引いた腕ごと引きずられる。
引きずられながらダイゴさんを振り返る。
彼なら兄の暴挙を止めてくれるはず。
目が合うと、ダイゴは爽やかに微笑んで親指を立ててみせた。
グッジョブ?ファイト?一発死んで来い!?
……あーもう、ホウエン男児って総じて『こう』なの!?
そうこうする内に、というか引きずられている内に、ジムの真ん前までたどり着いていた。急に立ち止まったユウキの背にぶつかって、はがばりと顔を上げる。ユウキは人好きのする笑顔を浮かべて、デンジと相対していた。
「デンジさん、ただいま」
「おかえり」
ユウキの腕から少しだけ顔を出してみれば、デンジはもたれるのをやめて、まっすぐに立っていた。
遠目にも分かりやすいようつけられた電灯で煌々と照らされて、その真下にいる彼の金髪はまるでスポットライトを浴びているように輝いている。
「ほら、」
軽く背中を押され、はデンジの正面に立つ。
見つめるというより、睨むという方が近いくらいに力をこめて見上げる。
視線が交錯する。
せめて彼の瞳から何かを読み取ろうと目を凝らして、…早々に諦める。
は、と短く息を吐いて、一歩、前に進む。
――…そのままの言葉。つまり、飾らない言葉ということだろう。
息を吸う。
「ただいま帰りました、デンジさん。――先ほどはご無礼のありました段、謹んでお詫び申し上げます」
一呼吸で流れるように言って、きっちり45度頭を下げて、嫌らしくないタイミングで上げる。
父に連れられてポケモン協会のお偉い人たちに会った際に覚えた所作と、テレビの教育番組で見た『詫び状の書き方』の内容を思い出しながら動く。
後半は手紙の書き方だから言葉として正しいかは分からないが、 ――…うん、我ながら美しい。
自画自賛していると、後ろでぶふっ、と噴出す音がした。
顔だけで振り返れば、ユウキが腹を抱えて蹲っている。
隣に立つダイゴも、すましているがなにかピクピクしている。…え、ツボどこ?
「ごほっ、…お前何やったんだよ」
「なんだったかなー」
だって、私が全面的に折れなきゃいけないかっていうと、そうでもないんじゃない?
冷静に考えてみれば、二人が見てる前で聞くことでもないしね(ゝω・)b
2011.09.28. 改.